ストレスマネージメントという考え方 ~”歯ぎしり(ブラキシズム)”の話~

本日は少々難しい”歯ぎしり”についての話です。

なぜこんなことを書くかというと、朝、布団の中ですべてを理解したので忘れないようにメモ代わりにブログを書いておる始末です。

これをスマホで確認しながら今日のセミナーで質問しようという魂胆。

 

歯ぎしりというと悪いイメージを持たれますが、歯科の世界では表題にも書きましたように、日中貯まった様々なストレスを睡眠中に発散するひとつの有効な手段であるという認識が一般的になってきました。

これは主に神奈川歯科大学の佐藤貞夫教授が公に言い出したとされていますが、僕はずっと以前よりそのように考えていました。

もちろんストレス発散には有効かもしれませんが、あまり過剰だと歯や歯を支える組織には非常に有害となります。

実際のところ、歯が壊れる原因の多くが歯ぎしりではないかと言われているほどです。

歯ぎしりにはギリギリ音が鳴る奥歯全体でするようなものから、ある特定の歯だけをコリコリ擦り合わせるようなもの、音のしないものだったり、広義においてはくいしばり等さまざまなものがあります。

 

昨日から始まった”自然の会”のセミナーでも講師の先生は、「歯ぎしりとはストレスマネージメント(ストレスをコントロールしている)としての意味があり、いかにうまく歯ぎしりできるような噛み合わせにするかが重要である」と述べられました。

で、ぼくもずっとそう考えていたわけですが、昨日寝入りばなと今朝目が覚めてから布団の中で思いついたのは、それは実は間違いであるというものです。

考えてみれば、もし歯ぎしりがストレスの発散であれば、歯ぎしりの最中の脳波を計ってみれば、θ波やδ波などのゆったりした脳波に変化しているはずですが、当然のことながらそうはなりません。

実験により覚醒状態に近いα波であることがわかっています。

そりゃ思いっきり噛んでるんだもん、交感神経優位の戦闘状態ってやつです。

 

これは例えてみればお酒を飲んで暴れてみるとか(僕のことじゃないよ)、カラオケで大声で歌いまくったりするのと同じですよね。

ストレスの発散と言いながら結局は疲れてしまうわけです。

歯ぎしりだって、ひどい場合は朝起きたら顎が疲れています。

それどころか全身疲れちゃってます。

飲酒やカラオケは覚醒状態でやっているわけですが、歯ぎしりは睡眠中、つまり無意識のうちにやっているので、人が頭でこうしようと思ってるわけじゃありません。

果たして生体がわざわざストレス発散のために身体が疲弊してしまうようなことを自然にやるものでしょうか?

逆じゃないの?

こう考えてくると、歯ぎしりが人間のストレスマネージメントに役立っているというのは、?となってくるのですね。

 

睡眠という行為は須く心身の疲れを取る、自らの癒しに他なりません。

その最中にわざわざ疲れることをするというのは、寝る時の何かが間違っているから身体が誤作動を起こして歯ぎしりをすると考える方が理にかなっているでしょう。

本来、睡眠中は副交感神経優位になり身体がリラックスしているべきなのに、交感神経優位になるということはおかしいわけです。

では、何が間違っているのでしょう?

こんなもの原因は二つしかありません。

ひとつは寝る時の姿勢。

もうひとつは寝る時の口の状態。

人は仰向け寝が原則です。

それ以外の姿勢だと何らかの睡眠が原因となる障害(睡眠の障害ではない)を起こします。

口は閉じて寝るのが鉄則です。

口を開けて寝ると歯ぎしりしちゃいます。

そ・し・て・

口を開けて寝る原因は舌先の位置にあります。

本来は赤ちゃんがそうであるように、上の前歯の裏側の歯ぐきに舌先がついていないといけません。

これがすべての原因です。

 

歯がストレスマネージメントに役だっているというのは、一見正しいように見える誤った考え方。

より正確に言うと、イイ線いってんだけど、ある一つの事象を反対側から観てしまっている。

身体を休ませよう、癒そうという目的の睡眠において、本来副交感神経優位にならないといけないのに、舌位が間違っているからそうなれない。

そのために交感神経優位になり、歯ぎしりをしてしまっている。

こういうことです。

歯ぎしりは、原因ではなく結果です。

 

僕は時に普通の人にとっては非科学的に思えることを書くことがあります。

大阪大学歯学博士という肩書があるにもかかわらずです。

多くの人は、偉い先生の講演を聞いたり著作を読んだりして鵜呑みにする傾向があります。

教えられたことは知ってるけど、そうでないことは知らないという態度です。

僕は常に頭の中に疑問を持ち続けます。

そして無理に答えを出すことなく、インスピレーションがわくのを待ちます。

その結果、ある時ふいに仮説が浮かぶことがあり、それを元に臨床的に検証していくと、どうやら間違いがないみたい、となりその仮説は僕の中で真理となります。

しかし他の先生方は、僕のような名もない開業医が言うことなどに耳を貸しません。

「何を聞いたか?」ではなく「誰がそれを言ってるのか?」がその仮説の信憑性にとって重要だと考えるようです。

これって、僕とそういう先生方とどちらがより科学的な態度と言えるのでしょうか?

僕の中でずっと歯ぎしりは”ストレスマネージメント”でありました。

それを自ら覆したわけで、こんなことは滅多にないのですが、僕は過去の自説にこだわるよりは真実を知りたいと思います。

ああ、これで半分寝ながら考えたこと忘れずに済むわ(笑)

 

本日は東京競馬場において優駿牝馬(オークス)が行われます。

当然セミナーで見れません。

来週は競馬界の最高峰レース、東京優駿(ダービー)です。

毎年生まれてくる数多くのサラブレッド。

それらすべてが、ただひとつの頂点を目指すのです。

そう、ダービー馬の称号を得られるのは、何千頭のうちたった一頭。

これまた来週の土日は神戸で義歯のセミナーに参加するので見れない。

悲しいことこの上ない。

2012.5.20

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「ストレスマネージメントという考え方 ~”歯ぎしり(ブラキシズム)”の話~」2件コメント

  1. みみー より:

    納得しました。
    歯ぎしりをなんとかしたい、といろいろ検索し、こちらのサイトにたどり着きました。
    子どもの頃から舌で前歯を押してしまって、歯並びが悪かったです。
    歯科矯正を期に、舌で前歯を押さないように気をつけていますが、いまいち、舌の位置がさだまりません。上の前歯の裏の歯茎に舌をつける癖をつけていこうと思います。
    これで歯ぎしりを無くせたらうれしいです。

  2. Dr.KAPPA より:

    みみーさん、コメントありがとうございます。
    あとは身体の歪みの問題もあります。
    そのうち順次きちんと書こうと思っています。

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