海賊とよばれた男~明治男の気概~
先日もご紹介した百田尚樹氏の新刊です。
この作家は名作と駄作を交互に書く癖があるようで困ったもんですが、本書は「永遠の0」と並ぶ素晴らしい本であると言えます。
書の中では国岡商店の店主、国岡鐡造が主人公となっておりますが、物語はノンフィクションであり、国岡商店とは出光興産のことで鐡造はその創業者である出光佐三氏であります。
細かい説明は省略しますが、戦後GHQの統制下にある中で、間違っているものはGHQにまで乗りこんで文句を言い、外資に事実上乗っ取られている形の他の石油会社からは徹底的な排斥行為を受ける中、同商店は全従業員が一丸となってセブンシスターズ(石油メジャー)を敵に回し真っ向勝負します。
店主は戦時中も自分の財産を投げ打って徴兵された社員の家族に給料を送り続け、戦後何も残っていない状態でも誰ひとり馘首することがありませんでした。
超男前であっぱれの一言に尽きます。
それに比べて、時代は違うとはいえ今話題になっている会社はどうでしょう?
時代は違うと言っても、むしろ戦前、戦中、戦後を生き抜いてきた会社の方がすごいよね。
僕は件の会社の歯科診療室に大学の医局に在籍中、出張に行っていた関係で、毎月そこから給料を頂いておりましたので心中複雑なのですが、そもそも企業の存在意義、企業の成長とは何ぞや?と考えざるを得ないのです。
僕は”いかに多くの人々の役に立つか” それしかないと思っています。
そして国岡鐡造の経営理念もまさにそこにあったのです。
彼はのちにこのような質問を受けます。
「中には全然ダメな社員もいると思うが、それでも馘首しないのか?」
「確かにその通りだが、社員はすべてわたしの家族である。出来の悪い家族がいたからといって、そのものを切り捨てたりはしないだろう?」
そういえば、うちのスタッフの間で人間関係の問題が起こった時に、僕も彼女たちに話し合いの場で同じことを言いました。
いろんな場面で共感するというか、僕と出光佐三氏を同列に見るのは失礼ですが、自分と同じものを感じるのです。
明治を生きた人というのは、(皆が皆、そうではないでしょうが)なにか一本筋が通っている気がします。
情報が溢れ、多様性が認められる今、そのような生き方について学ぶのもあながち無駄ではないのではないでしょうか?
強くお勧めします。
ついでに紹介と言っては何ですが、実は大阪本町の紀伊国屋書店で百田氏のハードカバー上下を買った時に、あれ?と手に取ってみたのが船井勝仁氏の新刊「失敗から学ぶ」でした。
偉大なオヤジを持った息子は往々にして苦しみます。
自分自身を、そして自分の往く道を探します。
勝仁氏は僕より少し年下ですが、彼の現在の地位を考えた時に、このように正直に自分のことを書くのはなかなか出来ることではないと思います。
その人当たりの柔らかさとは裏腹に、彼の男気を感じる次第です。
ただし、僕はこの本を購入はしませんでした。
単に社会的地位のある人の著作を買うのが癪にさわるからという理由です(笑)
先ほど広島から家族が帰ってきました。
一人だと、何をしていても楽しくありませんなぁ。
僕は一人で飲みに行ったりすることが多いですが、それは家に家族がいるからであって、それがなければ外に出るのも億劫になります。
嫁さんがおらんから遊びに行ける、とかいう性質の男じゃございませんです。
2012.8.31