原則として、口の中の治療に使う材料は統一するべきでしょう。

特に噛み合う上下の歯については合わせる必要があります。

それによって摩耗度合いを極力均一にしたいのです。

しかしながら全部がきれいな自分の歯であっても、様々な理由により摩耗度合いが異なり、それによって噛んだ時に高い所、低い所が出来て身体が歪んでいくこともあります。

口の中が治療痕だらけであろうが、そうでなかろうが、何か自分で気をつけることでプラスになることはないか考えてみましょう。

 

ここでまず、身体と噛み合わせの単純な関連性について理解してもらいます。

座っても立っても構いませんが、背筋を伸ばしてもらって正面を向いて上下の歯をそっと噛み合わせてみてください。

その上下の歯の当たり方を覚えておいてくださいね。

では一度噛み合わせを解いてください。

次にそのまま首を右に回してみて、同じことをやってみてください。

どうですか?

通常、右の奥歯しか当たらないか、右の方が強く当たるはずです。

では次に首を左に回してやってみてください。

今度は逆になるはずです。

左の奥歯しか当たりません。

また噛み合わせを解いて、前を向いてもらって、次は首を前に傾けてそっと噛み合わせてみてください。

前歯しか当たりませんよね。

首を後ろに向けてやると一番奥の歯だけが当たるようになります。

この四つの単純な相関性というのが非常に重要になるので、よく覚えておいてください。

 

もう一度左を向いてもらえますか。

その状態では左の奥歯が当たって、右の奥歯は空いていました。

単純に言うと左側が高くて、右側が低いわけです。

この状態で非常に硬い物を咀嚼しようとすると、実は左では噛みづらいのです。

右の上下の奥歯はわずかに空いているわけですから、そこに硬い物が入ってぐっと力を入れて噛もうとすると、左の一番奥の歯が当たってきて右で力を発揮する支えになってくれます。

左は逆で、そこで力を入れようにも右側の奥は空いたままですから支点がないため、非常に噛みづらい。

テレビを見ながら食事をするような習慣がある人は、テレビをどの場所に置いているかによって、知らないうちに噛む側が偏ってしまうということがあるということです。

これは、幼い子がダイニングキッチンで母親の方を目で追いかける場合についてもいえます。

 

人が右側で咀嚼する時、頭蓋骨の乳様突起といわれる所と胸骨・鎖骨をつなぐ右側の胸鎖乳突筋が収縮しますが、首を左側へ回転する時にもこの筋肉が働きます。

人の噛み癖をみるときに、首を左右に回してもらい、左の方がスムーズに(あるいは大きく)動くのであれば右噛みの癖がある可能性が高いと言えます。

右側ばかりで咀嚼していると、今も言ったように胸鎖乳突筋の働きで右側の鎖骨が上方に引き上げられます。

すると背骨は右側を凸にした形に側湾していきます。

その結果、骨盤は左側が上方に引っ張られ、左足が短くなります。

よくカイロプラクターが患者さんの両足首を持って、どちらが短いとかやっていますが、それはこういうところを診ているわけです。

 

よってバランスよく両側で咀嚼するのが良いのですが、それは少なくとも若いうちに確立しておくべきもので、40歳も過ぎてから急にバランス良く噛もうとすると顎の関節に異常をきたすことがあるので要注意。

子どもの食事の時の姿勢というのは非常に大切ですので、気をつけてくださいね。

 

咀嚼というのは意識下のものですが、無意識のうちにやってしまうことで、むしろこれが一番異常な歯の摩耗を引き起こすというのが”歯ぎしり”と”噛みしめ”です。

以前のブログに書きましたが、これらは過度の飲酒やカラオケで騒ぐのと一緒で、昼間に溜まった肉体的、精神的ストレスを発散しようとして結局自分にダメージ与えている類のものです。

この時、就寝中にもかかわらず交感神経優位の状態にあります。

そして必ずといっていいほど舌先が低位にあります。

低位というのは舌の先が下の前歯の裏側あたりに位置していることで、本来は上の前歯の裏側の歯ぐきに接していなければなりません。

舌の位置が低位にあると、連動する神経や筋肉の関係で口は開いた状態になりやすいし、下顎は後退して気道が狭くなり鼾をかきやすくなり、歯ぎしりや噛みしめをしやすくなります。

逆に言うなら、舌の位置を正すことで他のことは自動的に矯正され得るということです。

当院では舌の位置の是正のための特殊なマウスピースを作ったりすることもあります。

特にお子さんの歯ぎしりにはてきめんに効くようです。

 

寝る時の姿勢をみてみましょう。

本来は仰向け寝です。

朝までこの状態で舌も正しい位置にあれば、非常に深く質の良い眠りを得られますし、夢見も良いです。

ところがうつぶせ寝をするとロクなことがありません。

この写真をみてください(モデルは慧)

うつぶせ寝左.jpg うつぶせ寝右.jpg

真下を向いて寝る人は少ないと思いますので、だいたいこのどちらかでしょう。

よく見て頂くと、顔を向けた側の足が上に上がり(骨盤が上がる)、反対側の手が上にいきます。

必ずしもこうなるとは限りませんが、身体の原則的にはこれが自然で楽なはずなのです。

これは先ほどの片噛みの説明で述べた通りのことが寝ている時にも起こっていることを示します。

常態化した寝癖も身体を歪ませ、ひいては片側噛みを助長し、それがまた身体を歪ませるという悪循環を生みます。

でもね、朝まで上向いたままで寝るのは至難の業ですよねぇ。

枕を工夫したりすれば良いのでしょうが、これについては現在研究中であります。

ちなみに上の写真を見比べたら、顔を左向きにしている方がよりスムーズに左側を向いているのがおわかりでしょうか?

右向きはなんだか窮屈そうでしょ?

よって彼は右側でよく噛んでいる可能性が考えられます。

 

左を向いてうつぶせ寝をすると、右側が低くなるので原則として右側で噛みしめてしまいます。

歯ぎしりに関しては、どの状況でどの部位でするのかは今のところ不明です。

夜中じゅう特定の歯だけ噛みしめていると、噛みしめた歯は沈みますから、他の歯が強く当たるようになります。

すると強く当たる歯がやられてくる。

その歯は歯周病になりやすくなります。

こんなこと言ってる歯医者、他に僕は知りません。

 

自律神経のバランスが崩れれば、それ即ちほとんどの場合において交感神経優位になりますので、血圧は上昇し、筋肉の緊張は高まります。

自律神経というのは様々なものの影響を受けますが、目からの刺激、それと花粉や黄砂なども大きな影響を与えます。

僕は寝室に空気清浄機を置くことを強くお勧めします。

うちは当院に流れている殺菌水を超音波噴霧器で夜中じゅう空気中に噴霧しており、驚くことに風邪引きにくいし、花粉・黄砂の影響も受けにくいし、そもそも扇風機との併用で室温が2,3度下がるのが不思議。

寝る部屋にはそもそもエアコンがありませんが、今年の夏はかなり快適でした。

 

身体のバランスが悪ければ当然、噛み合わせのバランスも崩れますから、そちらにも気を使わないといけません。

そこで登場するのが靴です。

そう、あのテクテク歩く靴です。

一日中で最もよく歩くのに使う靴にはお金をかけましょう。

そもそも正しい靴選びを学ぶとか、オーダーメイドの靴を作ってみてはいかがでしょう?

間違った靴選びで足が変形してしまって、体の重心が不安定になっている人のいかに多いことか。

僕は靴選びと舌の位置で、靴舌健康法と呼んでいます。

 

もひとつ追加しておくと、現代人は誤った身体の使い方をしております。

物拾い誤り.jpg 物拾い正.jpg 物拾い、膝曲げ.jpg

例えば床にある物を拾う時に、ほとんどの人は左上写真のように右手と右足を出します(モデルはおさむちゃん。写真撮ってもらう時に衛生士の村上君に「先生、頭入りますけど・・・・」って、入ってええんじゃ!)

これはこのように歩行する人がいないが如く、間違った不安定な身体の使い方です。

本来は右手で拾うなら左足を前に出すべき(写真中央)なのですが、こうすると手が届きにくくなります。

だから膝を曲げるという動作が必要で、日常的にスクワットのようなことを数多くすることになるはずなのです(写真右)

更に物を取るという一連の動作の中で、現代人は肩甲骨を大きく動かす(滑らす)ということをしなくなりました。

小手先で物を取るようになったのです。

肩甲骨はすなわち健康骨。

ここが大きく動くことにより、身体全体の筋肉がストレッチされ血液循環も良くなります。

考えてみれば、肩甲骨を動かす日本人になじみの深い運動ってね、ラジオ体操第一なんですよ。

あれはきちんとやれば実に良く出来た体操なんですねぇ。

こういった事に関して感心のある方は、かの操体法の創始者である故橋本敬三氏の本を読んでみてください。

まさしく温故知新という内容です。

ただし装丁は古臭くてダサい。

 

最近うちではね、治療そっちのけで、こんなことばっかり患者さんに喋ってまんねん。

歯科領域に限らず多くの病気の原因は誤った生活習慣にあるのであれば、その指導をするのはごくごく当然なんだけど。

2012.9.12