ここではあくまでも僕の歯科医としての本音をお話します。
そして出来る限り患者さんの目線も考えてお話したいと思います。
この記事の目的は、あなたがより良い歯科治療(予防)を受けるためのアドバイスをすることです。
もう一度申し上げますが、あなたにとってより良いという意味です。
お口の健康のためや、それを通じての体全体の健康のためということではありません。
そんなことを書けば、まったくもって常識的な何の面白味もない話になってしまいます。
あなたが望むような治療を受けるためにどうすれば良いかというスタンスで展開していきますので、おつき合いください。
希望を明確にし、それにふさわしい医院を選ぶ
まず最も重要なのはあなたが何を望むかということです。
一生の歯の健康を望むのか、それとも今の痛みだけ止めてくれれば良いのか、もちろんその中間もいろいろあるでしょう。
それを明確にして頂きたいのです。
僕たち歯科医は、依頼があって初めてそれに対して応対するわけですから、依頼内容があやふやではこちらも困ってしまいます。
これは問診票で書くようになっていますし、医院によってはまずカウンセリングを実施して詳細に聞いてくれるところもあります。
まあ、本来ならいきなり治療台で口を開けるよりは、ひどい痛みがないのであればまずは話をするところから始めるのが妥当なのでしょう。
今はどこの医院でも本当に患者さん本位になってきていますから、よほどのことがない限り不愉快な思いをすることはないと思うのですが、でも全くないわけではないというのも事実です。
これらは相性の問題もありますので、いくら評判が良い歯医者でも自分に合わないと思えば止めた方が無難ですね。
これは身内を良くいうつもりじゃなく、歯科医の皆さん本当によく勉強されているし精進されており、また顧客サービスということも十分念頭においていらっしゃいます。
だからあとは縁と相性ということになると思うのです。
友達はすごく良いと言っていたけれど、なんか自分には合わないみたい、というのだってあるわけです。
但し各医院それぞれ自分のところの特色(こだわり)というのがあり、保険診療を全くしないところ、あるいは保険でできるだけ良質の医療をと頑張っているところ、予防歯科だけで治療を一切しないところ、初診はカウンセリングだけで予約なしの急患は原則お断りのところ、等さまざまです。
どれが良い悪いということではありません。
それがその医院の方針であり、そこで他との差別化を図っているということです。
医院を選ぶに当たりそのあたりも十分考慮しなければなりません。
自分の目的に合わない方針を掲げている歯科医院に行って文句を言ってもこれははじまりません。
今はホームページを充実させているところが多いので、それを参考にされるのもよいと思います。
ちなみに僕自身は、旅館に例えると一泊3万以上もする高級旅館のサービスは行き届いてはいるが、少し肩が凝ります。
それよりは朝食の自家製味噌で作ったみそ汁が美味しい、そして夜のご馳走も必要以上に出されて残すようなことがない、それでいてきちんと掃除されており清潔で家族的な温かいもてなしをしてくれる、そういったところを好みます。
これはあくまでも僕の感じ方です。
ついでに言っておくと、僕はそんなつもりは全くないにもかかわらず、サービスをする側の笑顔の向こうにある本当の心の状態が見えてしまうことがあるので、困ったものなのです。
その瞬間すべてが嘘臭く見えてしまうのです。
何が言いたいかというと、設備やインテリアの豪華さもいいのですが、医療機関として大切なのはまず清潔であること。
医療者として一番気をつけるべきは安全であるということです。
今はプライバシー保護という観点から個室化全盛で、少なくともセミセパレートが多いようです。
当院ではワンネスという視点とスペースの問題から個室化はしませんでした。
あえて言えばセミセパレートですかね。
本当に個人的なお話をするときには狭いながら別室に移動します。
これらも患者さんの好みの問題でしょう。
歯科医やスタッフの笑顔というのはよく誤解されるのですが、別に愛想が悪いわけじゃないのだけれど無理やり笑顔が出来ない人だって多いわけです。
でも心の中では真摯に患者さんに向きあっている人もいるわけなので、実際のところあまり参考にならないんじゃないかと思います。
もちろん笑顔で接遇されたほうが気持ちはいいですけれどね。
患者さんの姿勢と歯科医の表裏
歯科医の中には真面目なゆえに、患者さんが応急処置だけ望まれると露骨にいやな顔をする人もいるかもしれません。
もっと真剣に自分の歯の健康のことを考えて欲しいと思うが故なのですが、こういう人は性格的に真面目なので嫌々であってもその応急処置は丁寧にすることでしょう。
逆にそういった時に愛想のいい笑顔で「ハイハイ」と快く治療してくれる人が手を抜いてることだってありえるわけです。
どのような歯科医と出会うかは、実はあなたが呼び寄せている話なので僕は関知できません。
患者さんは治療の詳細は分からないというのが本当のところなので、表面上感じられることと実際に行われていることがかけ離れていることもありますよ、ということは知っておいてください。
あくまでも可能性の話ですからね。
僕だって、明らかに歯のことなんかどうでもいいという患者さんが来れば、一所懸命に治療する気には正直言ってなりません。
だからといって手を抜きはしませんし、そういう人に限って下手に手を抜くと後から面倒くさくなるのできちんとやるのですが、どう控えめにみても心がこもった治療とは言えませんね。
これは歯科医側の問題でしょうか?
先ほども言いましたが、患者さん側の心の反映だともいえるわけです。
治療費の問題
これも大事な問題ですね。
そしてお金のことはなかなか患者さんも医院側もはっきりと相手に言いにくいようです。
なぜ、保険ですべてまかなえないのか?
毎月の収入からみれば少なくない保険料を払っている患者さんから言わせると当然の疑問だと思います。
でも保険というのはまず財源が決まっていて、それを各治療に割り当てるという方式であり、 おまけにそれを決めているのは役人であり歯科医ではありません。
何が適正かというのは歯科医にしか分からないでしょう。
でもそういうことをすると無茶をすると思われているわけです。
確かに以前はそうだったのかもしれません。
国民皆保険制度になって、とにかく毎年保険点数のアップを要請し、それにより外車や家を買い、息子を私立に行かせ、という時代もあったことは事実であります。
僕もそのおかげで大学に(国立ですが)行ったわけだし、ここまで育ててもらったので偉そうには言えません。
でも今は時代が違います。
僕たち現役の歯科医が望むのは、あくまでも適切な医療に対する適正な評価でありますが、いかんせん国の財政が破たんしている今はどうしようもないですね。
歯科医療というのは、時間も手間も材料費などの経費も莫大にかかるのですね。
ですから本当に体にとっての最善なことをしようと思えば当然のことながら、自費治療にならざるを得ません。
そもそも保険治療だけで真面目に経営をしようと思えば相当数の患者さんが来院してもらわないと無理なのです。
今、自費治療に全く頼らず保険診療だけで(それも良質な治療をしていて)健全な経営をしている歯科医医院がどれくらいあるのだろうかと思います。
断っておきますが、僕は保険診療を否定するつもりは全くありませんし、自費治療を推奨するわけでもありません。
外国に行けば分かりますが、日本の健康保険制度は誰もが安心して暮らしていけるという点に置いて世界に類を見ない素晴らしい制度なのです、本来はですけど。
僕はあくまでも真実を述べているだけです。
大阪大学歯学部を卒業し、博士号も取得し、教鞭もとっていた人間が話しているのです。
非常に中立的な立場からお話しているつもりですが、僕は患者さんの本音も厚労省の本音もわかりますが、歯科医の本音は歯科医にしかわかりません。
個々の治療費についてはまた個別にお話ししますが、大まかなことを言いますと、僕は歯の治療にお金をかけることくらい有意義なお金の使い方はないと思っています。
通常、お金をかけただけの値打は必ずあるはずだからです。
家のリフォームも大事でしょう、お年寄りがいらっしゃるのなら尚更です。
車を買い換えるのもいいと思います、何といっても車があれば便利ですから。
ブランド品を買うのもそれはそれで結構なことでしょう。
仕事がつまっていて、とてもじゃないけど歯のことなんかかまってられないのも当然です。
仕事を抜けて歯医者になんか行こうものなら上司にどう思われるかわかったもんじゃないです。
何より家族を養わないといけないんですからね。
子供や孫のためにお金を残しておくのも親心ですし、自分の葬式代や戒名代くらいは少なくとも子供たちに迷惑をかけたくない気持ちもわかります。
でもね、少しスタンスを変えて考えてみてください。
あなたが年をとって子育てからも、会社からも、家庭からも解放された時に何をしますか?何が楽しみでしょうか?
これは僕が言っていることではありません。
多くの患者さんが過去を振り返っておっしゃっていることなのです。
「もっと、若い時に歯を大切にしておけばよかった。失ってから歯の大切さがわかった。年取ってからの楽しみは食べることしかないから」
これが多くのあなたの先輩たる患者さんの本音なんです。
物を買うのはいつだって出来ますし、そもそもそんなもの自分の人生で一生大切にともに過ごすものでしょうか?
家は確かに大切ですが、もしあなたが路頭に迷った時に歯がなければ健康を害して確実に死にますよ。
何のために仕事をするのですか?
食べていくためですよね。
養うべき家族だって、その家族が食べるために働いているわけです。
じゃあ食べるための歯は何より大切なんじゃないですか?
歯は失ったら二度と戻ってきません。
あなたが命を捧げている会社は、あなたの忠誠は求めますがあなたの失った健康の保障はしてくれません。
あなたの代わりなんかいくらでもいるからです。
あなたは何のために生まれてきたのでしょうか?
今を生きるためなんじゃないんですか?
だったら、自分が今をよりよく生きるためにお金を使うことがもったいないことでしょうか?
なんだ、結局歯医者の説教か!
違いますよ。
これは僕が言っているのじゃありません。
あなたが普段無視している、あなたの心と体の声なのです。
よく聞いてあげてください。
あなたにとって、何がベストなのか。
それでもそんな余裕はないというあなた。
わかりました。
そこまでおっしゃるのなら、すべて理解された上でそう望まれるのなら、
僕はそんなあなたの意思を尊重して、あなたのためにあなたが望まれるように最善を尽くしましょう。
あなたのその選択はいずれ自分にある結果として返ってくるのだけれど、
それがあなたにとって必要なことなのかもしれません。
それのお手伝いをさせて頂きます。
というのが、ならまちワンネス歯科のスタンスであります。
これらは「歯の治療なんかにお金や時間をかけるのはもったいない」ということに対する僕の意見でありまして、保険治療がダメで自費治療にしなさいということでは決してありません。
保険でまかなえるものは保険でやったらいいと思いますし、実際当院ではそうしています。
ただし、口の中のこわれ方と希望されている内容とを勘案した時に、ちょっとこれを保険でお願いしますと言われても困るなあということも少なくないのですね。
まあ、正直にその旨をお話しますけど。