僕は「咬合(噛み合わせ)に関して造詣が深い」と言っても、おそらく同業者からそう文句は出ないと思います。

で、そんな僕が最近、もっともっと咬合について勉強し、理解を深めようとしています。

その中で思うことがあります。

昨日の白水貿易主催の「デンタルセレブレーションin大阪」

主軸のスプラインインプラントというのはHA(ハイドロキシアパタイト)コーティングされたもので、これは海外では思いっきり否定されています。

過去に苦い失敗をした時にそこを触らないというのは世の常で、学会でもHAインプラントの良好な成績を発表しても海外演者は目もくれません。

しかし、このインプラントは適切に使用されたなら素晴らしい優位性があることも事実なのです。

 

僕は大学以来、一般的なチタンインプラントのひとつであるストローマン(ITI)インプラントというのを用いてきました。

最近Bone Level(ボーンレベル)という新製品が出て、それはそれで良いのだけれど、システムが複雑になったのと、外資が日本の販売店を乗っ取ったみたいな営業態度が嫌で、スプラインインプラントも使ってみようかとなったのです。

 

少し説明しておきますと、チタンインプラントは骨と結合すると言っても100%くっつくわけじゃありません。

それに関しては色々なデータがありますが、僕の臨床的感覚では骨とくっついているのはインプラント全面積の半分以下です。

ただくっついている部分の結合が強いので錯覚するだけです。

チタンインプラントの骨結合はosseo-integrationと呼ばれますが、HAインプラントの結合様式はbio-integrationと呼ばれ、より緻密な骨結合があるとされています。

そもそもハイドロキシアパタイトというのは生体内に存在するものですから当然と言えば当然です。

 

昨日の講演会で何人かの演者の話を聞いて、非常に印象に残ったことがあります。

一流と言われる歯科医ほど重症の歯を救える術に長けているわけですが、その人たちが自身の講演の中で共通して言われたのは次のようなことです。

 

高齢化社会の現在、70歳を超えて初診で来られインプラント治療をする。

その際に普通なら何とか治療して残せるような歯をどうするか?

どうするか、というのはその患者さんが治療を終え、定期検診をしていく中で80歳や90歳になっていった時に、無理して残した歯が果たしてどうなるのか?

おそらく抜歯をせざるを得ない時が来るでしょう。

仮に上の前歯3本を残して他が全部インプラントであったとしましょう。

その患者さんが年をとって通院が無理な状態になった時に、その3本がもうダメだとなった。

ではその3本を抜いて、あとどうするの? ということです。

来院してもらってインプラントの手術など到底無理。

では他が全部インプラントなのに、そこだけ入れ歯にするの?

じゃあ何のためのインプラントだったの?ってなるわけです。

それであれば、最初からその歯を無理して残さずにインプラントにしておいた方が結局は患者さんのためではないか、という話。

 

これはインプラント治療をしている歯科医として非常によくわかるのですが、違和感があるのも確か。

だって助かる歯を将来を見越して抜くというのですから。

正解は僕にはわかりません。

ただし、患者さんがインプラント治療を望まれているとはいえ、あと10年20年後のことを考えたらこの歯は抜歯しましょうという説明をするのであれば、よくフィットした入れ歯という提案がどうしてなされないのか? という疑問が残ります。

入れ歯であれば抜歯になってもその部分の歯を元の入れ歯に追加すればよいわけですから、何の問題もありません。

僕なら無理してインプラントにせず、MTコネクターで治療するな、という症例発表がいくつもありました。

もちろんね、東京の青山で開業していて、お金はあるので最高の歯科治療をと望まれた場合に、入れ歯という提案はしづらいというのはあるんだけどね。

以上が前置き。

 

インプラントはいくら骨とくっつくと言っても生体にとって異物には変わりありません。

中にはインプラントをしたがために体調がおかしくなる方もいるようです(当院では経験ありませんが)

よく言われるのはインプラントがアンテナの役割をして電磁波を呼び寄せてしまうことによるというものです。

僕の見解は、そういうこともあるかもしれない、しかし、そうであるならば厳密に言うと歯科治療で口の中に金属を入れること自体がダメになるわけだし、整形外科の世界では骨折の治療後にスクリューやピンを取らずに残しておくことだって出来ないわけです。

ただしそれに関して否定はしません。

僕が今強く思うのは、歯科医も医師も、もう少しあらゆることをフェアに見るということをしないといけない、ということです。

民間療法を頭から否定してみたり、インプラントは絶対ダメと言ってみたり。

かたよっています。

 

これはうちの医局の現教授が声高らかに言ってることなんですが、いわゆる顎関節症というものがあります。

日本での顎関節症に関する歴史というのは中々に複雑でして、学術的な根拠のない怪しげな治療法がもてはやされたりもしたことがあります。

テンプレートと言われるものはその典型でして、いまだにやっている人がいるのは非常に残念なことです。

細かい説明は抜きますが、あんなもの素人が考えたって自殺幇助装置でしかありません。

で、現在ではその反動として、顎関節症というのは自然治癒することも多いので、歯を削るとか被せ物をやり変えるなどの不可逆的な(元に戻すことが出来ないという意)咬合治療は絶対に控えるべきであるという見解が一般的です。

これには僕も大賛成でして、少なくとも顎関節症という病名がつくのなら当院での第一選択は運動療法と経過観察です。

マウスピースなどはほぼ100%作りません(大学にいた20年前は顎関節治療と称して100%マウスピースを作っていた。当時は医局がそういう方針であった)

ところが、ここからが話がおかしくなってくるのです。

自然治癒することがあるから、顎関節症と咬合(噛み合わせ)は関係ない。

咬合のアンバランスが顎関節症の原因となることはない、と言うのです。

阿呆なアメリカ人の言うことを真に受けてる留学経験のある教授たちの愚言です。

僕のいた講座の現教授などその筆頭なのですが、馬鹿を言うにも程があります。

 

顎関節症というものは顎の開口制限、開口時の雑音、疼痛を主な症状とするものですが、それに限れば放っておいても治るというのは確かでしょう。

しかし、身体の不調というのは原因があって起こるのです。

その原因を明らかにすることなく(多くはストレスと言ってごまかされる。ただしストレスが原因のことも多いのは確か)、顎関節の痛みが消えたとか、口が開くようになったとかで治癒とするのはおかしい。

なぜならその原因が一過性のもので、症状も一過性なら良いのですが、誤った生活習慣なり何か持続している原因があるのなら、顎関節の症状の消失は単に身体の他の部位の不調に変化しただけとも考えられます。

頭痛、肩こり、腰痛、血圧の上昇、その他諸々。

そして、先の理論の信奉者たちは決して身体の他の症状(不定愁訴)を調べようとはしません。

それはそれ、顎関節症状は顎関節だけのこと、と考えるのです。

アホです。

国立大学の教授をしてその程度です。

権威なんてね、僕らに言わしたら「フンッ!」てな感じよ、正直言って。

頭が本当に良くて、腕も立つ人は通常、大学病院というような自由のきかないところにいつまでも身を置きません(例外はあります)

 

まともな歯科医療を実践している歯科医なら、噛み合わせと歯周病(これも学会的には無関係とされている)、噛み合わせと全身症状などは深く関係していることを理解しています。

だって、噛み合わせを治してそれらが快方に向かうことを嫌というほど経験しているし、それ抜きでは非常に治療成績が悪いことも熟知しているから。

で、これは何を示すかというと、大学で咬合を教えている教授たちは、実は一番咬合がわかっていないのだということです。

誰が何と言おうと、目の前で患者さんに起こっていることは認めなければならない。

それをエビデンス(学術的根拠)がないからと頭から否定するのは学者の取るべき態度じゃありません。

しかし、エビデンスがないことを延々やり続けるのもおかしい。

今のところ現象に根拠がついていっていないというだけですから、とりあえず患者さんが良くなればいいんだ、という態度じゃなく根拠を探すことは必要でしょう。

 

インプラントが電磁波を集めて体調がおかしくなる患者さんがいるというのは事実だと思います。

だからといってインプラントを全否定するのも違うと思います。

フェアでいこうよ。

僕の言うことも、国立大学の教授が言うことも、歯科界の臨床的なリーダー達が言うことも、全部素直な態度で聞こうよ。

それが学究の徒の取るべき態度じゃない?

その先にこそ真実があるんじゃないの?

インプラントの本当の問題点は違う点にあるのね、じ・つ・は・・・・

それについては次回。

 

で、昨日セミナーが終わって一人でニコちゃんとこに開店と同時に入って、だらだら喋って酒飲んで肴喰って、奈良行きの最終の”各駅停車”で帰ってきて(一人で居酒屋で5時間も何しとんねん!)、朝嫁さんに言われました。

「あんた、靴下もう片方は?」

ないんです。

昨日履いてた赤い靴下の片割れが、どこを探しても見つからないのね。

う~~~ん・・・・・

なんで?

2012.9.3