咬み合わせと全身の健康については諸説あります。
大学の教授の中でも例えば咬み合わせ治療により頭痛が治るとか腰痛が治るとかいうことに否定的な人も多くいます。
ですからここで私が自説を述べた所でone of themになってしまうわけですが、少なくとも一般的な歯科医よりは大学病院勤務の時代より咬み合わせというものに深くかかわってきていると思いますので、そういった人間が話してるんだと思って読んでください。
体が歪むには様々な原因があります。
ストレスとか花粉とか体に合わない物を摂取したとかで自律神経のバランスが崩れた結果、特定の筋肉や靭帯が緊張したり、骨がずれたりすることもあります。
骨格のバランス上最も大切というか大きな役割を果たしているのが骨盤(仙腸関節)であり、次に重要なのが頸椎です。
それと深い相関関係にありわずかなズレで体全体に影響を及ぼすのが顎関節なのですね。
なぜかというと、下顎の動きのバランスが悪いとその上に非常に重い脳を収めた頭蓋骨があるために、体全体が変に揺すぶられるような力を受けるからです。
また地面との接触点である足の骨や筋肉も腰から上の歪みを受けながら、体が倒れないように自らのバランスを変えるので、ここも無視できないところです。
咬み合わせと影響について
さて、咬み合わせが悪いと先ほど述べたように下顎の動きがおかしくなるので、それが原因となって全身の骨格や筋肉に影響を与えていきます。
ところが逆もまた真なりで、何らかの原因で体が歪んだためにその影響を受けて下顎の位置がずれ、その結果として咬み合わせが不調になることもあるわけです。
咬み合わせが不調になればそこからまた全身へとその影響が波及しますのでいわゆる負のスパイラルですね。
どこかで最終的に落ち着くまでは歪み続けるのかもしれません。
ですから患者さんが咬み合わせの不調を訴えて来院された場合、本当の最初の原因を特定するのはかなり困難であることがおわかりいただけますでしょうか。
確かに現状を見れば咬み合わせに問題があるように見えるけれど、そうなった本当の原因は別のところに存在する可能性もあるんですね。
結局、初発原因を特定することにこだわるのは意味がない、というよりやめた方がいいのではないかと考えています。
そこで実際の治療となると、上に述べた主な関節にアプローチすればどれかがヒットする確率が高いのです。
だから足の調節だけで咬み合わせが治ることだってありますし、頸椎を調整するだけで咬み合わせも骨盤のズレも治ることもあるのです。
もちろん顎関節(咬み合わせ)のズレを正すことで全身症状が奇跡のような回復をすることだってあります。
ただね、この世界に長くいる私の見たところ100発100中という歯科医はいません。
皆それぞれの持論で勝負しようとするからです。
何度も言いますが原因と結果の糸がもつれまくっているので、何を最初に治せば良いかというのは非常に診断しづらいのです。
ですから初めから不可逆性の治療(歯を削るとか、かぶせ物をいきなりはずすとかの一度手をつけると元に戻らない治療)をすることは滅多にないはずなのです。
スプリント(マウスピース)だけで治そうとする人がいます。
またその種類も様々です。
正しい姿勢を維持するように指導することで治そうとする人もいます。
0-ringテストを使って正しい下顎の位置を探そうとする人もいます。
放っておけば自然に治るという人もいるのです。
本当に100人歯科医がいれば100通りの治療法があるといっても過言ではないでしょう。
皆が自分が正しいと思ってやっているのですが、100人の患者さんすべてが治らないわけです。
その治らない症例に対する考察をすることなく自説が正しいと言ってる人がほとんどなんですよ。
このへんが咬み合わせと健康という話になった時に、一筋縄でいかない理由であります。
まとめ
以上まとめますと、咬み合わせは確かに全身の状態に影響を及ぼす。
そして体が歪んでいく過程の中で咬み合わせも狂うことが少なくないため、咬み合わせがその症状の原因でなくても、咬み合わせの治療をすることで症状が改善することが往々にしてある。(実はこれこそが咬み合わせがすべての病気の原因だとする歯科医たちの錯覚の原因であります)
そして、咬み合わせ治療によりそれらが全く治らないことも当然ある、ということです。
よって、できるだけ不可逆性の治療よりは、可逆性の治療から試してみるのが良いでしょう。
完璧な咬み合わせの人はいない
さて、ここから後半のお話です。
実はね、咬み合わせが完璧だなどという人はほとんどいないのです。
皆どこかしらズレていることが多いのですよ。
現に私も咬み合わせという点ではあまり良くありません。
歯並びは良いのですが、いかんせん成長の過程で上顎の曲線の大きさとと下顎のそれとがうまく合わなくなってしまったのです。
右側で咬めば左が当たらない、左で咬めば右が当たらないという状態です。
私は脊椎側弯もあるのですが、だからといってそれらが何か不定愁訴のように辛い症状になるかというとならないわけです。
ほとんどの人が厳密に言うなら咬み合わせのバランスが良くないのに、それで悩んでいる人は少ないのですね。
(ま、気づいてないだけかもしれないけれど)
ということは、咬み合わせの不調や不定愁訴を訴えられる患者さんというのは、他の人と何が違うのだろう?となるわけです。
咬み合わせのスピリチュアル的解釈というのは、コチラでも解説しているので読んで頂きたいのですが、もう少し具体的に見てみましょう。
前の歯医者に削られてから具合が悪くなったというケースは非常に多いです。
良識ある歯科医なら別に身内を守るということではなく、前医に対する批判はしません。
なぜなら我々が得る情報は患者さんからの一方的なものだからであり、そこで一緒になって批判したって一時的に患者さんが同意者を得た感じになるだけです。
普通は淡々としかし真摯に患者さんの訴えを聞くはずです。
ところが、これは咬み合わせに限ったことじゃないのですが、前医の批判をする患者さんほど治りにくいのです。それが何故かはこれから説明していきます。
来院される度にあそこが痛い、ここが調子悪いと言われるのですが、途中頻繁に「前の先生がいきなりバーッと削られてから・・・」、もう許せないモード全開なのですね。
よくよく見ていると結局その人が訴えているのは頭痛とか肩こりとかではなく、あの先生が許せないということではないかと思えてくるのです。
この話はよく注意して聞いて頂きたいのですが、患者さんが間違っているとかいうことではないですよ。
ただ事の本質は何か?ということなのです。
”苦しみの正体”でも書いていますように、結局自分の中に深く沈めている親に対する許せない想いというのが噴出しているにすぎないのです。
左右どちらの歯を削られたのか、どこの咬み合わせが調子悪いのかで母親父親のどちらに対するものか、あるいはその許せない想いに両親がそれぞれどう関わっているのかがわかります。
もう一つ言っておくと、その許せない歯科医を選んだのはまぎれもなくその患者さん本人であるということです。
つまり無意識のうちにその許せない想いを再体験するためにその歯科医を自ら選択したわけです。
許せない想いが悪いわけではありません、その体験をしたくて生まれてきたのですから。
ただ、その体験からいつまでたっても逃げてばかりなので、許せない出来事が次から次へとやってくるという話です。
事の本質を見極める
咬み合わせが全身に及ぼす重要な影響とその治療について書かれた歯科医院のホームページは山とあります。
そしてその医院での患者さんの体験談を載せているところも多いです。
それらは決して嘘ではありません。
実際に症状が緩和して喜んでいらっしゃる方がたくさんいるのも事実です。
ただ、事の本質を見極めないと咬み合わせ治療で健康にはなったけれど幸せではないという状態がまたしても続きかねないのです。
ここに書いたことを今現在咬み合わせで悩んでいる患者さんが見ればお怒りになるかもしれません。
でも、このホームページは”ならまちワンネス歯科”の集客のためにあるのではなく、皆さんの心に幸せの種をまくことを目的としています。
ですから歯科医としての私のイメージは冷たく映るかもしれませんが、真実を書かざるを得ないのです。
どうかご理解ください。
より良き明日のために。