誇り高き男 ~The Proud Ones~

以前読者から頂いたコメントに対する答えが延び延びになっていましたので、本日はその話題。

あ、その前に先日の僕が母校で歴史の授業をするというのは、あくまでも仮想の話ですからね。

本当にやったわけじゃないですよ。

 

世間には”ワクワクドキドキ系の歯医者” というのが存在します。

ざっくり言うと、歯医者さんに行くのが楽しくなるような歯医者ということです。

システムとしては、まず初診で来られた患者さんの約一時間にわたるカウンセリングから始まります。

原則としてズキズキするような痛みがない限り応急処置はしません。

とにかく相手の歯科治療に対する希望や想いを思いっきり聞くわけです。

治療そのものは何か変わったところがあるわけではありません。

 

ちなみに初診の時の(初対面の状態での)カウンセリングでしゃべる内容など、あくまでも表面的な戯言でしかなく、当方には必要ないことで、よってうちではやっていません。

本当に聞きたい事は相手が触れられたくない核心ですから、そんなもの感じ取るしかないのです。

 

治療が終わった人に対する定期検診などのためのケアルームがあり、そこには歯を削る音が絶対にしないように、そもそも削る道具が置いてなかったりします。

また子供たちの予防のために”キッズ・クラブ” などを作り、比較的安い年会費制で虫歯を作らず、きれいな永久歯の歯並びになるようにします。

この系統の歯医者の大元は大阪にあり、僕もよく知っているのですが、今やそのスタイルは日本全国に行きわたり、行列のできる歯科医院としてその名を轟かせています。

 

昨年末の某講演会で、予防歯科では草分けの講師の先生はこの系統の歯医者のことをボロクソに言っていました。

僕は笑っちゃったのですが、まあ一理も二理もあると思うのです。

僕の場合はその先生とは少し違う意味合いですが、「あ、こりゃ嘘があるや」と感じるわけ。

スマイル・コーディネーターと呼ばれる、患者さんを笑顔で迎える係の女性の目の奥にある、すごい対人恐怖心。

「きっとこの人、小さい時にお父さんにきつく叱られたことがあったんだろうなぁ」 と思ったり。

そこの院長、っていうか全国のワクワクドキドキの総元締めの先生の目の奥にある、切ないまでの寂寥感。

寂しいからこそ父親に認めてもらおうとして頑張ってしまう。

端的にそれを示すにはずばり、医院を流行らしてお金を稼ぐこと。

途中で方向転換して人を喜ばせて笑顔を見たくなる。

結局は自分の寂しさの裏返しなのですけど。

 

どちらも表面的にはファストフード店並みの笑顔をしているのですが、内面はまったく違うのが読み取れるのです。

これでは患者さんに幸せの種をまくのは無理だ、と思うのですね。

あまり具体的には話せませんが、表の顔と裏の顔があるようです。

 

しかし、経営的には大成功しているように見えるので、彼のセミナーには全国から歯科医が集まります。

そして同じようなシステムにしていって、医院が繁栄しすごくハッピーに(一見)みえる人も多くいます。

それはそれで大変に結構なことだと思います。

た・だ・し・・・・・そこに嘘がなければ、です。

白衣をやめて、スタッフ全員がカラフルなポロシャツ着て、いつもニコニコしていて、それできっちりした治療をする。

それが自然に出来ているのなら素晴らしいことです。

僕には無理だけど。

本来そういう性格の人じゃないのに、”ワクワクドキドキ”のシステムのために自分をそこに嵌めようとするなら厳しいものがあるのではないでしょうか?

 

時として、院長が自分のやり方に固執するあまりスタッフとの軋轢が生じたり、経営的な問題を抱えたりすることがあります。

スタッフとの人間関係というのは、院長の人間的成熟度に関係するのでここではおいといて、経営のためにやりたくもないことをやる、違う自分を演じるというのは僕は疑問に思います。

しかしスタッフの給料を払わないといけない、家族を養わないといけない。

自分の意地だけの問題ではないのも確か。

 

当院でスタッフの給与が遅れたことはなく、その支払いが何より最優先されますが、妻や子供たちは贅沢から程遠い生活をしています。

テレビの旅番組を見るたびに、「ああ、温泉行きたいねぇ」という妻にいつも申し訳なく思います。

しかし、妻のご両親が非常に質素な生活をしてくれたおかげで(貧乏という意味ではない)、彼女は足るを知っています。

子どもたちは贅沢を知らないので、知らないということは存在しないのと同じです。

ですからうちの子供たちは自分の創造するものに興味があるのであって、LEGOと”トムとジェリー”のDVD以外には物に関心はないようです。

妻はたまには旅行がしたいというのはあるでしょうが、基本的に毎日の生活を楽しんでおり、おそらく今、幸せだと感じています。

 

以前メールをくださった、”老いた若造”さん、これが僕の返事です。

ご友人の歯科医が自分のやり方にこだわるあまり、奥さんが心配されるような経営状態になる。

それがその一家に対してどのような問題たり得るのかは、その家族の質によります。

もっというなら、彼の仕事のスタンスそのものはどうでも良いのであって、それによりどう幸せな家庭を築きあげていくのか、が問われているのではないでしょうか?

自分を曲げて、家族を金銭的に豊かな状態にするのも一つの選択、このまま突き進みいずれは好転すると考えるのも一つの選択です。

それらはあくまでも幸せをつかむためのプロセスでしかありません。

大切なことは仕事のやり方云々ではなく、何を創造しようとしているのか、それによりあなたや家族は本当の意味で幸せになるのか、でしょう。

 

ちなみに本年をもって、個人セッションや遠隔ディクシャは止めにしまして、歯科や健康に関すること以外のメール相談も打ちきります。

そんなこといつまでもやっていたら皆さんのためになりませんもの。

こちらは真剣に答えているのに、後からお礼メールがくるのなんてね、半分くらいなんですよ。

笑っちゃうでしょ。

そんな常識すらないから、こんなつまらん質問よこすんだよって心の中で思っています。

どうぞ自分の直感を信じてやってみて。

失敗したらやり直せば良いだけのこと。

何度も言いますが、絶対に大丈夫なのです。

この間何かで読んでプチ感動したのですが、金銭問題で困っている男性に友人がこう答えるのです。

「それって、金で済む話でしょ」

 

素晴らしいと思いません?

2012.10.15

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「誇り高き男 ~The Proud Ones~」1件コメント

  1. 老いた若造 より:

     いつも拝読しております。
    この度はご丁寧な返事を頂き痛み入ります。
    商売柄、数字を追いかけ成果主義、物質至上主義にハマっていたことを痛感しました。
     私の友人も高級外車に乗るような生活はしておりません。
    私が見ても質素だなと思います。
    当人の選択した経営方法(自分の信念)で収入が減少しても、彼がその結果をどの様に受止めるかは彼のみ知ること。
    奥様のご心配ももっともなのですが、彼の思うようにすること、内なる声に背いていやいや仕事をしないこは重要であると思います。
     私も自分の事務所をかまえたとき、武士は食はねどタカ楊枝と生きたいです。
    いつもながら長文、乱文にて失礼いたしました。

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