すべての人間はおよそ3才くらいまでに何らかのトラウマを受けます。例外はありません。
それは妊娠中に胎児の状態で受けることもありますし、出産時に受けることもあります。
これらはインナーチャイルドとかバーストラウマと呼ばれたりします。
- 例えば、ある人がお母さんのお腹にいる時に、隣家が火事になったとしましょう。こういう場合は、生まれてから火や音に敏感になったり、その時の状況により閉所恐怖症になったりすることがあります。
- また、よくあるのは後継ぎを望まれているような家庭にあって両親が男の子を期待していた時に、女の子で生まれてきた子はその後自分自身の女性性を否定しようとします。
- 出産の時に陣痛促進剤を飲んだり、帝王切開を受けたりすると赤ちゃんは本当はもう少しお腹にいたいのに無理に出されるわけですから、母性回帰というか乳離れをしにくくなります。
生まれてから3才までは、子供は完全にワンネスの世界にいるのです。
みんながひとつだという感覚にどっぷり浸かっています。
だってそれまで魂は天国にいたわけですから。
ところが何でも口に入れようとする赤ちゃんに危ないからと「そんなことしちゃダメよ」と言いますよね。
ティッシュペーパーを何枚も引っ張ったりしてもすぐにダメ出しされるわけです。
親から言わすと“いい子にしていなさい”というわけです。
これが子供をワンネスの世界から引きずり出してしまいます。
そして子供は親のことが大好きですから、親の言うことを聞くことによって、親が望むような子になることによって親の愛を得ようとします。
つまり、自分が今のままでは親に愛してもらえないと感じてしまうわけです。
これこそがその後の人生を決定づけるのです。
トラウマというと何か悪いもののように思われるのですが、正しくは条件づけといった方がいいでしょう。
ある出来事に対して思わず独特の反応をしてしまう、その人の性格の一部を決めるものなのです。
先ほどはトラウマの典型的な例を示しましたが、何もそう大層なことばかりではありません。
クリスマスケーキを分ける時にお母さんはわたしより妹に大きな方をあげた、みたいなことの方が実は多いのです。
要するにトラウマとはたった一つではなく大小さまざまあって、それを自分の記憶というか細胞の中に刻み込み、かつその後の人生においてそれらをどんどん膨らませてしまいます。
そして、そんなトラウマが自分にあるということを気づかないことにより、無意識のうちに自分らしさというのが形成されるということなのです。
これが人生における起承転結の起の部分です。
これらトラウマ達に知らないうちに縛られながらその後20代、30代まで生きていきます。
この間、人がするのは基本的にトラウマから逃げるか、闘うか、あるいはトラウマのなすがままになる、そのどれかでしかありません。
極論するならそれ以外のことはやっていないのです。
そのことにより自分自身を守ろうとしつつ、自分が何者か一生懸命探しているのですね。
つまり、人は30代位までは人生を本当に生きているとは言えない、単に目の前の出来事に反応しているだけだと言えるでしょう。
これを人生のサバイバルゲームと呼び、承の部分に当たります。
さて、ここで文字通り人生の転機が訪れます。
それは結婚とそれに続く子育てです。
結婚すると常に自分の前に全く違う人間が存在することになるわけです。
その人がいかに趣味が同じで考え方が似ていようが、違うものは違うのです。
それにより人は自分が何者かを必然的に見つめざるをえなくなります(実際に結婚をそのようにとらえている人はごく少数だとは思いますが)。
そして子供が生まれます。
子供というのは親に愛されるために生まれてきます。
愛されることにより愛とは何かを親に教えようとするのですね。
子供がたずさえてくるメッセージはたった一つで、それは「お父さん、お母さん、人というのはもっと自由に生きていいんだよ」ということなのです。
人はそれまでずっとトラウマに縛られて生きてきました。
生きてきたというよりは単に無意識の防御反応をしてきただけでした。
その根底をなすのは今の自分のままでは人に愛されないという感覚です。
そこで子供は親に対してそのことに気づかせてくれるのです。
子供は全く自由でしょ。
親がいろんなことを禁止しなければ、やりたいことを何だってやるわけです。
それは自分が生まれてきたこの世界に対する深い信頼と安心感によります。
もし子供がまだ小さい時に「どうしてお父さんとお母さんの子供に生まれてきたの?」と聞いたなら、すべての子供はこう答えるでしょう。
「だってお父さんとお母さんに会いたかったから」
子供は本質的に親のことが大好きです。
たとえ世間で思われる良い親でなくても大好きなのです。
そのことにより、子供は親に対して「あなたはあなたのままでいいのだ」「何も自分を変えなくっても、わたしはあなたを愛しています」ということを伝えてくれるのです。
これにより心の解放が起き、親はそのままの自分自身を受け入れられるようになります。
同様に他人のこともありのまま受容できるようになります。
トラウマ自体は細胞に刻み込まれていますのでなくなりませんが、それがトラウマではなくその人の性格の質を決めるという本来の役割を果たすようになるでしょう。
この時、人はもうトラウマから逃げたり闘ったりしなくなります。
そして出来事に反応するのではなく、本当の意味で人生を生きる、自由に謳歌するようになります。
残念ながら実際にそうしている人はごくわずかですが。
これが転の部分に当たります。いや~、子供って有り難いですねぇ。
ちなみに、お子さんがいらっしゃらない方、結婚していない方には別の形で気づく機会が現れますからご心配なく。
結の部分はその後自分の人生を生きながら人が目覚める手伝いをして、やることをやりきったと思ったら人生の幕を引くように向う過程です。
人が目覚める手伝いというのは別に目立ったことをしなくても、その人が自由に人生を楽しむことそのものが他の人の役に立つのです。