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患者さんへのメッセージ(より良く歯科治療を受けるために)

インプラントについて

インプラントの安全性について

僕は大学院を卒業して所属していた講座でインプラントの研究室を任されたことがあります。

その頃は日本においてようやくオッセオインテグレーション型(インプラントと骨が直接結合するタイプ)のインプラントが定着しようかという時でした。

それまでは様々な試験段階のようなインプラントが国産、外国製問わず使われており、失敗に終わるケースも多かったのですが、このオッセオインテグレーション型のインプラントの登場により成功率は飛躍的に高まったのです。

現在では全世界中でこれしか使われていないといっていいでしょう。

僕が医局にいた頃、今から20年前にすでに30年経過症例がそのインプラントの開発者であるブローネマルク教授の元にあったので、もう50年の実績があるわけです。

ですから、安全性に関しては全く問題がない、と言いたいところですが実際のところはわかりません。

もちろんインプラントそのものによる為害性などは報告されてはいませんが、何といってもアレルギー性が非常に低いとはいえチタンという金属を加工して生体内に埋め込むわけですから、本当のところはまだ明らかでないというのが正しいのでしょう。

もちろん生体安全性に関する研究は山のようにあって、問題なしとなっているからこれだけ普及しているんです。

それにそんなこと言ったら整形外科で骨折の治療なんか受けられないですね。

あくまでも厳密に言えばということで、それが引っかかる人はおやめになった方がよろしいでしょう。

インプラントって本当にいいの?

噛める噛めないということでいうなら、入れ歯に比べれば格段にいいです。

健康な自分の歯で噛む力と比べて、入れ歯は10~20%しかでないことがいくつもの研究で報告されています。

インプラントなら自分の歯と同じかそれ以上の力が出ます。

それに、歯がなくなった時に通常用いられるブリッジや入れ歯と比べると他の歯に全く余分な負担をかけないという点が何より優れています。

長い目で見れば、従来の方法だと負担を強いている歯が必ず弱ってくるからです。

先ほどインプラントは自分の歯以上の力が出ると書きました。

自分の歯の場合は、骨と歯の根との間に薄い靭帯が存在します。

ところがインプラントの場合は骨と強固に直接くっついているために、それだけの力が出るわけです。

ただし、その靭帯は根の周りで様々な有益な役割を果たしているので、逆に言うとインプラントにはその天然の防御機構が備わっていないとも言えるのです。

さて、それだけ強い力が出るインプラントですから、下手をすると噛み合う相手の歯を痛めてしまう可能性だってあるのですね。

 

これは非常に重要なことですからよく聞いてください。

インプラントをする上で最も大切なこと、それは治療計画にあります。

いくらインプラントが成功しても、10年後にインプラントだけ残って他は全部抜けてしまっては意味がありません。

インプラントを考える際に、もちろんそこで他の歯をさわらずによく噛めるようになるというのは大事なのですが、それ以上にその時点で残っている他の歯も長持ちするように働いてくれないと困るわけです。

要するにすべてのバランスの中で、長期的にインプラントが口の中の健康を長く維持するのに役立つかどうか、これであります。

抜けた部分だけをどうしようかという近視眼的な感覚ではいけませんよ。

またそのようなスタンスの歯科医は避けた方が無難です。

抜けているところ以外にグラグラしていてそのうちどうなるかわからない、でもその歯は抜きたくないというのであれば、そりゃもう絶対に入れ歯です。

そんなところにインプラントしちゃダメですって。

インプラントは治療単価が高いため、残念なことですが良い意味でも悪い意味でも医院の経営戦略の重要な武器として位置づけられています。

 

でも正直なところを言って、ずっと入れ歯で悩んでいた人がインプラントにすると、これはもうとてつもなく喜ばれます。

二度と入れ歯に戻れないとおっしゃいます。

入れ歯の経験が全くなく、初めて歯が抜けたところにインプラントを入れた場合、患者さんは自然に噛めてやはりハッピーになられるようです。

インプラントって怖くないの?~手術と合併症について~

インプラントが怖いという理由だけで、インプラント治療を全く考慮に入れない患者さんが少なくないのは非常に残念なことだと思います。

特に男性は怖がりですね。女性の方が肝がすわってらっしゃいます。

やはり出産経験の有無は大きいのでしょう。

患者さんが怖いというのを僕たちはどうしようもありません。

怖くないですよと言ったところで本人は怖いからです。

しかしながら、実際問題インプラントの手術を終わられた人の感想はその多くが「思ったより怖くなかった」です。

これは非常に単純な手術で終る場合で、非常に時間もかかって大変な手術もあるので一概には言えません。

でも大変というだけで、怖いというのとは別物だと思います。

医院によれば静脈内鎮静法といって一種の軽い精神安定剤を用いながら手術をするところもあります。

当院でも過去一度だけマイナートランキライザーを服用してもらったことがあります。

これも正直申しまして、手術中の不快感ということで言うなら骨の中に埋まっている下の親知らずを抜く方が大きいみたいです。

痛みと腫れについては、手術中はもちろん麻酔をしていますので痛くないはずです。

ただ手術時間が長引けば麻酔が切れてくるので、その時には追加をします。

僕の経験でも手術の後半で痛みを訴えられる方が数名いらっしゃいました。

術後の痛みについては、これも経験上皆無とはいいませんが、ほとんどないか、想定内の痛みのようで頓服を一回飲めば治まる程度のものみたいです。

腫れについては、ここではっきり申し上げておきます。

骨が十分に残っていて、ただインプラントを埋め込めばいいだけの場合は原則として全く腫れません。

ところが歯を抜くような状態ということは、その周りの骨がやせて少なくなっていることが多いため、インプラントと同時に骨の移植や再生治療を行うことがあります。

今ではむしろそれをやらないことの方が少ないのじゃないでしょうか。

そうしますと、傷口を完全に閉鎖するためと、骨の再生のための栄養源としてあえて出血を促すようにするために必ずと言っていいくらい腫れます。

それも結構な量、腫れます。

この場合の腫れというのは化膿してるんではなく内出血なんですね。

でもこれは術前に予想されるので、前もって患者さんにお伝えしておきますし、3,4日腫れても問題がないような手術日を選んで頂きます。

合併症について

次に合併症についてですが、まず現在ほとんどの歯科医院ではインプラントをする前にCTを撮影するはずです。

よほど簡単と分かっている時以外は、当院でも少し離れた病院に撮影を依頼します。

それによって、残っている骨の量と必要とされる骨の量を勘案し手術術式を決定していくわけです。

また神経や血管などの解剖学的に危険なエリアを確認しておきます。

それほど気をつけていても、あってはならないことですがトラブルが起きる事があります。

様々なトラブルが考えられますが、その際大切なのは歯科医の保身ではなく、まず患者さんの体のことでなければなりません。

ここを履き違えると、それこそ訴訟にまで発展します。

必要な医療機関に依頼して、プライドも何も関係なく真摯に対応することが望まれます。

当院でも過去お一人だけ、下顎のインプラントを3本埋め込んだ時にそのうちの1本が神経を圧迫したことがありました。

当時のCT画像は粗くて鮮明でなかったため、常には撮影をしていませんでした。

現在は非常に鮮明な画像になっています。

さてその原因は骨の頂上から神経までの距離に比べて、埋め込んだインプラントが少し長かったようなのです。

口唇のマヒが出たため、その時点でCTを撮影依頼し、原因となっているインプラントを撤去しそれより少し短いインプラントを再度埋め込みました。

時間はかかりましたが(およそ半年くらい)、口唇のマヒはほとんど消失しました。

こういうことを避けるために、避けられる事故を避けるために、もはやCTは必須と言えるでしょう。

インプラントはどれくらいもつの?

これもよく聞かれる質問ですね。

逆にお聞きしますが、インプラントすることになるということは自分の歯を失ったわけです。

じゃあ元々きれいだったその歯は、どのくらいもったのですか?

まあ、要するに今ある自分の歯を一生もたせるように努力されるならばインプラントも同様に考えて頂いて結構ですということです。

普通に手入れをして頂いて、数か月に一回は歯科医院でメインテナンスを受けて頂いていればまず問題ないでしょう。

たとえ寝たきりになられても、この原則は変わりません。

自分の歯が健康な状態であればインプラントも健康であると思われます。

定期検診は必須です。

だって、あなた人工心肺入れてる人が病院で定期的なチェックを受けなければどうなりますか?

何が起こっていても責任とれないですよね。

これは何もインプラントに限ったことじゃなく、自分の歯を大切にするためには歯科医院での定期的な検診は欠かせないと言えるでしょう。

 

ただし、例外があります。

インプラントをする時点では体調に問題がなかったけれど、その後重度の管理されていない糖尿病にかかるとか、悪性の腫瘍にかかるとかすると、これはダメになることがあります。

あとは噛み合わせのバランスが微妙に崩れてきて、あるインプラントに集中的に力がかかるような状態になるとインプラントの周りの骨がダメージを受けてダメになることもあります。

当院ではそれぞれお一人ずつそういう方がいらっしゃいました。

一人は叔父で血液の癌で亡くなりましたが。その時インプラント自体は骨の中にきちんとありましたが、その数カ月前の検診では周りの骨が溶けてきている状態でした。

もう一人はインプラントの周りが膿んできて、やむなく撤去せざるを得ませんでした。

これは本当に正直に申し上げているのですが、当院でのインプラントのトラブルの大きなものとすればこれだけであり、僕が施術したインプラントの総数に比べればかなり少ないわけです。

どんな優秀なインプラント専門医にかかったとしても、10年成功率が100%ということはありません。

研究データとしておよそ97~98%の成功率であると報告されている事実なのです。

インプラントって高くない?

だからどの歯医者も一所懸命やるんでしょうけどね、儲かるから。

冗談はさておき、自費の治療費の決定法は各医院によって千差万別です。

ですから一概には言えないのですが、基本的にはかかる経費により左右されます。

田舎と銀座じゃ家賃も違うでしょうし、人件費だって格段の差があるでしょう。

また安全により自然な結果を求めるがゆえに、様々な器械や材料を駆使すればそれだけ手術代は高くなります。

いろんな要素があるのですが、今の世間の相場をお話しましょう。

大学病院のホームページを調べてみました。

するとHPで自費の料金のことを書くのは問題があるのかしれませんが、あまりのってないんです。

その中でも明記されていたのは、名古屋大学医学部付属病院の歯科口腔外科で

インプラント埋入手術:1本当たり 189、000円

インプラント上部構造(かぶせもの):1本当たり 231,000円

また我が大阪大学歯学部付属病院は

術前検査 6万円前後

インプラント1本当たり(手術料、かぶせもの込) 約45万円

2本なら  約75万円

3本なら  約100万円

となっています。 (いずれも平成22年9月現在の料金)

どうですか?国立大学の付属病院ならもっと安いと思われませんでしたか?

およそ、これが相場でしょう。

普通の開業医ならすべて込みで30万~45万というところだと思いますが、その幅は先に述べたようにかかる経費によります。

ただし、1本10万円(手術料のみ)というのを売りにしている歯科医院もあります。

そこは薄利多売主義で、それだけの手術件数があるからその値段で十分やっていけるということらしいです。

これもひとつのやり方でしょう。

通常自費の治療費には少なくとも5年間くらいの保障費も含んでいることが多いと思われるので、そのあたりのこともよくお考えになりよく歯科医とご相談の上決められた方がよいですね。

値段のことを詳しく聞くのは決して恥ずかしいことではありません。

むしろ十分納得して頂くことの方を僕たち歯科医は好みます。

 

またこれらはあくまでも単純なインプラント手術の場合であり、骨を増やすなど特殊な術式を伴う場合には、それにプラスαが生じますし、それが決して安くありませんので十分説明をお聞きになってくださいね。

僕は現在幸いにしてすべて自分の歯であまり治療痕とかもないのですが、仮に歯を失えばどうするかというと、とりあえずはMTコネクターというのを試してみてその噛み心地を知った上で、以前勤めていた広島の歯科医院の院長にインプラントをやってもらうかな。

その方が患者さんの気持ちがわかるでしょうから。

 

どこでインプラント治療を受けたらいいの?

現在、〇〇インプラントセンターという名称の歯科医院が乱立状態でして、正直迷ってしまうところでしょう。

ただし、確かにそういったところはインプラントを専門にやっておられるので信頼性は高いですが、だからといって〇〇歯科医院が劣るというわけではありません。

そういったところにもスーパーデンティストのような方がいらっしゃるからです。

これははじめの項でも述べましたが、あなたがどんな縁を引っぱってくるかというのにかかってますので、何とも言えませんね。

ここでもやはりホームページとかを参考になさるしかないようです。

ただしそこではまあ、いいことしか書いてないですけど。

僕が書いてるようなぶっちゃけたホームページというのは非常に稀なんですよ。

だって、これ全然「ならまちワンネス歯科」のイメージアップになってませんからね(笑)

 

まとめ

僕は最近ブリッジでさえも良くないと思うようになってきました。

何年かすると支えている歯が力がかかり過ぎて割れてくることが多いのです。

これは他の多くの歯科医も経験していることです。

ですから歯を失った時に、もしいらない親知らずがあるのであれば自家歯牙移植を第一選択とします。(自分の親知らずを抜いて、歯がないところに移植する)

あとは他の歯の状態と患者さんの希望を考慮してMTコネクターかインプラントかですね。

よく言われることに、「友達にインプラントのことを聞いたけれどすごく痛くて腫れて大変だったそうです」というのがあります。

結局その方は自分の中で、どちらかと言えばやりたくないなあ、怖いなあと思っているので、そういった友達の意見を重視してしまうのですね。

良識ある歯科医ならきちんとニュートラルなスタンスで相談にのってくれるはずですし、無理やりインプラントをしてお金を引き出そうなんて考えません。

そこであなたに歯科医が語ることは全部本当のことなんです。

だって、かなりの数の経験に裏打ちされているからで、そのお友達の意見はごくごく一部の限られた見方にすぎません。

もちろんそれが嘘だというわけじゃないですよ。

また、僕の知る限りどの歯科医も非常によく勉強し研鑽をつまれているので、あなたがこの先生なら大丈夫と思われるのなら大丈夫なのだと思います。

もう一度、基本的な話に戻りましょう。

あなたはいったいどうなりたいのか?

これを元に自分の直感を信じてくださいね

まずはじめに知っておいて欲しいこと

ここではあくまでも僕の歯科医としての本音をお話します。

そして出来る限り患者さんの目線も考えてお話したいと思います。

この記事の目的は、あなたがより良い歯科治療(予防)を受けるためのアドバイスをすることです。

もう一度申し上げますが、あなたにとってより良いという意味です。

お口の健康のためや、それを通じての体全体の健康のためということではありません。

そんなことを書けば、まったくもって常識的な何の面白味もない話になってしまいます。

あなたが望むような治療を受けるためにどうすれば良いかというスタンスで展開していきますので、おつき合いください。

◇インプラントについて

◇予防について

◇マウスピースのお話

◇入れ歯の話

◇小児の治療について

希望を明確にし、それにふさわしい医院を選ぶ

まず最も重要なのはあなたが何を望むかということです。

一生の歯の健康を望むのか、それとも今の痛みだけ止めてくれれば良いのか、もちろんその中間もいろいろあるでしょう。

それを明確にして頂きたいのです。

僕たち歯科医は、依頼があって初めてそれに対して応対するわけですから、依頼内容があやふやではこちらも困ってしまいます。

これは問診票で書くようになっていますし、医院によってはまずカウンセリングを実施して詳細に聞いてくれるところもあります。

まあ、本来ならいきなり治療台で口を開けるよりは、ひどい痛みがないのであればまずは話をするところから始めるのが妥当なのでしょう。

 

今はどこの医院でも本当に患者さん本位になってきていますから、よほどのことがない限り不愉快な思いをすることはないと思うのですが、でも全くないわけではないというのも事実です。

これらは相性の問題もありますので、いくら評判が良い歯医者でも自分に合わないと思えば止めた方が無難ですね。

これは身内を良くいうつもりじゃなく、歯科医の皆さん本当によく勉強されているし精進されており、また顧客サービスということも十分念頭においていらっしゃいます。

だからあとは縁と相性ということになると思うのです。

友達はすごく良いと言っていたけれど、なんか自分には合わないみたい、というのだってあるわけです。

 

但し各医院それぞれ自分のところの特色(こだわり)というのがあり、保険診療を全くしないところ、あるいは保険でできるだけ良質の医療をと頑張っているところ、予防歯科だけで治療を一切しないところ、初診はカウンセリングだけで予約なしの急患は原則お断りのところ、等さまざまです。

どれが良い悪いということではありません。

それがその医院の方針であり、そこで他との差別化を図っているということです。

医院を選ぶに当たりそのあたりも十分考慮しなければなりません。

自分の目的に合わない方針を掲げている歯科医院に行って文句を言ってもこれははじまりません。

今はホームページを充実させているところが多いので、それを参考にされるのもよいと思います。

 

ちなみに僕自身は、旅館に例えると一泊3万以上もする高級旅館のサービスは行き届いてはいるが、少し肩が凝ります。

それよりは朝食の自家製味噌で作ったみそ汁が美味しい、そして夜のご馳走も必要以上に出されて残すようなことがない、それでいてきちんと掃除されており清潔で家族的な温かいもてなしをしてくれる、そういったところを好みます。

これはあくまでも僕の感じ方です。

ついでに言っておくと、僕はそんなつもりは全くないにもかかわらず、サービスをする側の笑顔の向こうにある本当の心の状態が見えてしまうことがあるので、困ったものなのです。

その瞬間すべてが嘘臭く見えてしまうのです。

何が言いたいかというと、設備やインテリアの豪華さもいいのですが、医療機関として大切なのはまず清潔であること。

医療者として一番気をつけるべきは安全であるということです。

今はプライバシー保護という観点から個室化全盛で、少なくともセミセパレートが多いようです。

当院ではワンネスという視点とスペースの問題から個室化はしませんでした。

あえて言えばセミセパレートですかね。

本当に個人的なお話をするときには狭いながら別室に移動します。

これらも患者さんの好みの問題でしょう。

 

歯科医やスタッフの笑顔というのはよく誤解されるのですが、別に愛想が悪いわけじゃないのだけれど無理やり笑顔が出来ない人だって多いわけです。

でも心の中では真摯に患者さんに向きあっている人もいるわけなので、実際のところあまり参考にならないんじゃないかと思います。

もちろん笑顔で接遇されたほうが気持ちはいいですけれどね。

患者さんの姿勢と歯科医の表裏

歯科医の中には真面目なゆえに、患者さんが応急処置だけ望まれると露骨にいやな顔をする人もいるかもしれません。

もっと真剣に自分の歯の健康のことを考えて欲しいと思うが故なのですが、こういう人は性格的に真面目なので嫌々であってもその応急処置は丁寧にすることでしょう。

逆にそういった時に愛想のいい笑顔で「ハイハイ」と快く治療してくれる人が手を抜いてることだってありえるわけです。

どのような歯科医と出会うかは、実はあなたが呼び寄せている話なので僕は関知できません。

患者さんは治療の詳細は分からないというのが本当のところなので、表面上感じられることと実際に行われていることがかけ離れていることもありますよ、ということは知っておいてください。

あくまでも可能性の話ですからね。

僕だって、明らかに歯のことなんかどうでもいいという患者さんが来れば、一所懸命に治療する気には正直言ってなりません。

だからといって手を抜きはしませんし、そういう人に限って下手に手を抜くと後から面倒くさくなるのできちんとやるのですが、どう控えめにみても心がこもった治療とは言えませんね。

これは歯科医側の問題でしょうか?

先ほども言いましたが、患者さん側の心の反映だともいえるわけです。

治療費の問題

これも大事な問題ですね。

そしてお金のことはなかなか患者さんも医院側もはっきりと相手に言いにくいようです。

なぜ、保険ですべてまかなえないのか?

毎月の収入からみれば少なくない保険料を払っている患者さんから言わせると当然の疑問だと思います。

でも保険というのはまず財源が決まっていて、それを各治療に割り当てるという方式であり、 おまけにそれを決めているのは役人であり歯科医ではありません。

何が適正かというのは歯科医にしか分からないでしょう。

でもそういうことをすると無茶をすると思われているわけです。

確かに以前はそうだったのかもしれません。

国民皆保険制度になって、とにかく毎年保険点数のアップを要請し、それにより外車や家を買い、息子を私立に行かせ、という時代もあったことは事実であります。

僕もそのおかげで大学に(国立ですが)行ったわけだし、ここまで育ててもらったので偉そうには言えません。

でも今は時代が違います。

僕たち現役の歯科医が望むのは、あくまでも適切な医療に対する適正な評価でありますが、いかんせん国の財政が破たんしている今はどうしようもないですね。

歯科医療というのは、時間も手間も材料費などの経費も莫大にかかるのですね。

ですから本当に体にとっての最善なことをしようと思えば当然のことながら、自費治療にならざるを得ません。

そもそも保険治療だけで真面目に経営をしようと思えば相当数の患者さんが来院してもらわないと無理なのです。

今、自費治療に全く頼らず保険診療だけで(それも良質な治療をしていて)健全な経営をしている歯科医医院がどれくらいあるのだろうかと思います。

断っておきますが、僕は保険診療を否定するつもりは全くありませんし、自費治療を推奨するわけでもありません。

外国に行けば分かりますが、日本の健康保険制度は誰もが安心して暮らしていけるという点に置いて世界に類を見ない素晴らしい制度なのです、本来はですけど。

僕はあくまでも真実を述べているだけです。

大阪大学歯学部を卒業し、博士号も取得し、教鞭もとっていた人間が話しているのです。

非常に中立的な立場からお話しているつもりですが、僕は患者さんの本音も厚労省の本音もわかりますが、歯科医の本音は歯科医にしかわかりません。

 

個々の治療費についてはまた個別にお話ししますが、大まかなことを言いますと、僕は歯の治療にお金をかけることくらい有意義なお金の使い方はないと思っています。

通常、お金をかけただけの値打は必ずあるはずだからです。

家のリフォームも大事でしょう、お年寄りがいらっしゃるのなら尚更です。

車を買い換えるのもいいと思います、何といっても車があれば便利ですから。

ブランド品を買うのもそれはそれで結構なことでしょう。

 

仕事がつまっていて、とてもじゃないけど歯のことなんかかまってられないのも当然です。

仕事を抜けて歯医者になんか行こうものなら上司にどう思われるかわかったもんじゃないです。

何より家族を養わないといけないんですからね

子供や孫のためにお金を残しておくのも親心ですし、自分の葬式代や戒名代くらいは少なくとも子供たちに迷惑をかけたくない気持ちもわかります。

 

でもね、少しスタンスを変えて考えてみてください。

あなたが年をとって子育てからも、会社からも、家庭からも解放された時に何をしますか?何が楽しみでしょうか?

これは僕が言っていることではありません。

多くの患者さんが過去を振り返っておっしゃっていることなのです。

「もっと、若い時に歯を大切にしておけばよかった。失ってから歯の大切さがわかった。年取ってからの楽しみは食べることしかないから」

これが多くのあなたの先輩たる患者さんの本音なんです。

物を買うのはいつだって出来ますし、そもそもそんなもの自分の人生で一生大切にともに過ごすものでしょうか?

家は確かに大切ですが、もしあなたが路頭に迷った時に歯がなければ健康を害して確実に死にますよ。

何のために仕事をするのですか?

食べていくためですよね。

養うべき家族だって、その家族が食べるために働いているわけです。

じゃあ食べるための歯は何より大切なんじゃないですか?

歯は失ったら二度と戻ってきません。

あなたが命を捧げている会社は、あなたの忠誠は求めますがあなたの失った健康の保障はしてくれません。

あなたの代わりなんかいくらでもいるからです。

あなたは何のために生まれてきたのでしょうか?

今を生きるためなんじゃないんですか?

だったら、自分が今をよりよく生きるためにお金を使うことがもったいないことでしょうか?

なんだ、結局歯医者の説教か!

違いますよ。

これは僕が言っているのじゃありません。

あなたが普段無視している、あなたの心と体の声なのです。

よく聞いてあげてください。

あなたにとって、何がベストなのか。

 

それでもそんな余裕はないというあなた。

わかりました。

そこまでおっしゃるのなら、すべて理解された上でそう望まれるのなら、

僕はそんなあなたの意思を尊重して、あなたのためにあなたが望まれるように最善を尽くしましょう。

あなたのその選択はいずれ自分にある結果として返ってくるのだけれど、

それがあなたにとって必要なことなのかもしれません。

それのお手伝いをさせて頂きます。

というのが、ならまちワンネス歯科のスタンスであります。

 

これらは「歯の治療なんかにお金や時間をかけるのはもったいない」ということに対する僕の意見でありまして、保険治療がダメで自費治療にしなさいということでは決してありません。

保険でまかなえるものは保険でやったらいいと思いますし、実際当院ではそうしています。

ただし、口の中のこわれ方と希望されている内容とを勘案した時に、ちょっとこれを保険でお願いしますと言われても困るなあということも少なくないのですね。

まあ、正直にその旨をお話しますけど。

予防について

一般的見解

通常予防歯科に取り組んでおられる歯科医院では、まず現在の資料をとります。

これは何をするにも必要なことです。

特に初診時の口の中の写真とカリエスリスク(むし歯のなりやすさ)試験は重要です。

生活習慣を知るための問診も大切ですね。

一緒に生活している家族の口の中や全身の健康状態がどうなのかも実はすごく参考になるのです。

カリエスリスク試験では、現在の口の中の細菌を調べます。

どのような種類の細菌がどれくらいの量いるのか。

唾液の緩衝能といって、唾液が食後酸性に傾いた口の中をどれだけ速やかに中和する能力があるのかも調べます。

これが成人の歯周病の場合は、若干免疫学的な検査に傾きます。

これらすべてその患者さんの現状をまず明らかにする、そしてその現状を招いている原因を模索する、そして治療法の立案とその治療効果の判定のために不可欠なものです。

また現在何の問題もないのであれば、なぜそうなのかを分析し、その状態を維持してもらう、あるいは今後起こり得るリスクを考えて注意してもらうためにも現状の資料採得は重要です。

むし歯になるということは、歯が口の中が酸性になって溶けるのと、再び唾液中のカルシウム分を取り込んで元に戻るのとの平衡状態が崩れる、つまり溶ける方が多くなることにより起こります。

その患者さんにおいて、そうならしめている原因は何か?を探り、それを除去していくわけです。間食も含めた食生活や、その他生活習慣、歯磨きがきちんとできているか、等々をみていくのですが、詳細は他の医院のHPでどうぞ。

歯周病も基本的には同じなのですが、歯科に限らず慢性病というのは生活習慣病と言われるがごとく、そちらを見直すことが非常に重要になってきます。 

治療が終わった後、その健康な状態を維持するために、また元々健康な人がその状態を維持するために、自分の現状を分析し、むし歯や歯周病にならないように、再発しないようにしようというのが予防歯科の目的です。

そのためには、3カ月に一度の定期検診とクリーニングが必須です。

なぜ3カ月かというのには研究による裏付けがあり、それより長くなると仮に口の中に問題があった時に、発見するのが遅くなり病態がより進行した状態になってしまうということです。

もちろん毎月やってもいいのですが、面倒くさいですよね。

ただし治療が終わった後の患者さんによっては3カ月だと開きすぎのことがあり、毎月クリーニングをすることもあり得ます。

 

とにかく、むし歯も歯周病も元来稀な病気なのだということ。

どちらも細菌感染なのですが、むし歯菌も歯周病菌もその数はともかくとして、誰にだっているのです。

お腹の中に大腸菌など誰だっていますが、それにより皆がお腹をこわすわけではありません。

病気になる方がどこかがおかしいのです。

様々なことに気をつけていても、現代という特殊な社会において本当に健康を維持するというのは大変なのかもしれません。

であれば、かかりつけの歯医者さんを持ち、そこで口の中に問題があろうがなかろうが、定期的に予防のため、健康のために検診を受けクリーニングを受けるというのは、いろんな意味からお勧めであります。

そして必要な時には、最初に述べた様々な資料をとり現状がどうなのかを判定する。

その方が結局、時間的にも金銭的にも、そして何より体のために得なのです。

と、ここまでが一般的見解でした。 

ならまちワンネス歯科の見解とスタンス

当院でも予防的なメインテナンスというのを実施しております。

いったん治療が終了した患者さんで、継続的にクリーニングを希望される方は3カ月に一度定期検診に来て頂きます。

とりわけインプラントなどの大がかりな自費治療を行った患者さんには必ず受けて頂くようお願いします。

およそどこの医院でも大差はないと思いますが、当院においては自費治療のトラブル(セラミックが壊れた等)に関して5年以内はほぼ全面的にこちらが負担して再治療をすることにしています。

もちろんそのようなことは稀ではあるのですが。

 

5年以上10年以内の場合、必要経費(材料費、技工料金など)だけは負担して頂きます。

そこに当院の利益は上乗せしません。

10年以上の場合は当院の手間賃も頂きますが、患者さんと相談の上、了解してもらえる範囲での再治療費の設定になります。

ただしこれらが適応されるのは、きちんと定期検診に応じてくださった場合のみ。

そうでないなら保証はしかねます。

車でも定期点検もロクにしてないのに、買ってから10年後の故障に対してディーラーに文句言っても、そりゃあんさん無茶だっせ!となりますよね。

だからといって全く知らんふりもできないんですがね、実際のところは。

これらは治療終了時に患者さんにきちんとお伝えします。

医院によっては、文書にして渡すところも多いです。

後から「そんな話聞いてない」と言われると困るので、まあ念書のようなものです。

 

治療終了後のメインテナンス(定期検診)以外の、より専門的な予防治療というのは当院ではやっておりません。

より専門的というのは、お子さんの唾液検査や細菌検査などのカリエス(むし歯)リスク診断および大人の歯周病の免疫学的な検査などは導入していないということです。

通常の一般的検査をした上でのフッ素塗布や歯石除去などはやっております。

その理由は以下の通りです。

 

大がかりな治療をした方には、それ自体が長持ちするためと、口の中全体が健康でありつづけるために、定期的なレントゲン撮影とむし歯や歯ぐきのチェックおよびクリーニングは必須だと認識しています。

しかしながら、僕は患者さんを管理していくというスタンスがあまり好きではありません。

人を管理するというのが、いくら健康のためとはいえ性に合わない。

むし歯や歯周病を引き起こす原因となっている細菌やそれらの病気そのものを悪者扱いするのも嫌いです。

細菌など誰にでもいるのにそれが原因で症状が出るなら、宿主(人間)側に問題があるのですが、それが必ずしも生活習慣だけではなく精神的、心理的側面も決して無視できないと知っている。

現状で病気とスピリチュアルを患者さんに語ったところで、いくら「ワンネス歯科」であってもそうそう受け入れられるものではありません。

下手をすれば患者さんの心理的解剖になりかねないので、気軽にそんなこと口にできないのです。

 

子供のむし歯が多いのなら、あきらかに両親に問題があります。

でもそんなこと診療台の横でお母さんに言えないでしょ。

重度の歯周病の人に、抱えている心理的問題を(こんなのすぐわかるんですが)指摘したところで、気分を害して次から来院されなくなるだけです。

でも本来的にはそのような視点が予防には絶対不可欠なのです。

であるならば、少なくとも現時点では時が来るのを待つしかない。

それまでは患者さんの健康を管理するというスタンスよりは、少々トラブル起こしても見守っていくという方が僕には性に合っています。

これらはあくまでも当院のスタンスでして、きちんとした予防プログラムを実施されている医院はそれはそれで非常に素晴らしいと正直言って思います。

 

僕が歯科医としてこのようなスピリチュアルメッセージを出す理由、それはいずれ時が来ればこのようなことをきちんと話せるように、それまでは少しずつ皆さんの意識変革の準備をお手伝いする、そのために歯科医をしているのではないかと思うのです。

マウスピースのお話

マウスガード

ひと口にマウスピースと言っても様々な種類があります。

様々な種類があるマウスピース

通常よく歯科で用いられるのは歯ぎしり防止用のマウスピース、あるいは顎関節症の治療のためのマウスピースでしょう。

歯ぎしり防止といいますが、マウスピースをしたからといって歯ぎしりが止むわけではありません。

歯ぎしりの際の強烈な力が直接歯やセラミックなどの被せ物にかからないように、間のクッション材として使っているだけの話です。

 

また顎関節症の治療としてのマウスピースの効果については現在は疑問視する見方が優勢です。

ここで言う顎関節症というのは、開口障害、開口時の疼痛、雑音のことをさしています。

それらに対する現在の主流の治療法は、まず何もしなくても自然に治るというのがひとつ。

筋肉の緊張を和らげたり、精神的な緊張を和らげる薬を処方する方法、それらとともに顎の運動療法を行うものです。

僕も顎関節症に対する治療としてマウスピースを用いることは今はほとんどありません。

僕が歯学部卒業後、補綴学講座に入局し最初に配属されたのが顎関節症の研究室でした。

大学ではそういう患者さんが多かったので、比較的他の歯科医よりは顎関節症を扱う機会は多かったと思います。

マウスピースも山ほど作って調整してきました。

僕の今の率直な感想は、確かにマウスピースが奏功する場合も皆無ではないけれど、あまり有効でないことが多いというものです。

 

学会では咬み合わせ(の不調和)は顎関節症の原因ではないとされています。

僕はこれには疑問を呈します。

どう考えたって、また僕の臨床経験から言っても、深く関係しているとしか考えられない。

ただし、顎関節症の治療と称して歯を削るなどの不可逆的な治療は非常に慎重に行うべきであり、できるなら避けた方が無難。

咬み合わせが顎関節症の原因と十分なり得るが、治療として咬み合わせをさわるのはあまり勧めないということです。

運動療法で症状が緩和するのであれば、そっちの方が圧倒的にいいでしょう。

 

上で述べたのはあくまでも顎関節症に限ったものです。

不定愁訴(頭痛、肩こり、腰痛など)をマウスピースで治しましょうという治療法も存在します。

ここは魑魅魍魎の世界でして、胡散臭いのから理にかなっているものまで多種多様です。

ずっと車椅子だった人がマウスピースを入れた瞬間、自分の足で立って歩き出す。

奇跡のようなことが起こるのも事実だし、患者さんの喜びはさぞ大きいものと思います。

これについては最後にもう少し詳しく述べます。

 

スポーツ用のマウスガードというのはコンタクトスポーツにおいて、口の周りに衝撃や打撃を受けた時に、唇を切ったり歯を折ったりしないためのもので、上の前歯と上唇の間に入る軟質の樹脂の厚みが最低3mmは必要とされています。

スポーツ用のマウスピースというのは、咬み合わせのバランスが悪い選手において、きちんと左右の奥歯に均等に荷重がかかるように設計されたもので、主に運動能力の向上を目的としています。

世間にはそのようなマウスピースを作っている医院もありますが、これはネットワークビジネスと一緒で、皆がそれをつけ出したら結局何のことかわからなくなりますよね。

ならば、ごく一部のスポーツ選手にだけそういったものを提供するのは如何なものか?と思うわけです。

これは下手をすればドーピング扱いになりかねません。

そもそも、結果として運動能力が向上するのはあるかもしれないけれど、それをマウスピースで達成しましょうと謳うのは少しやり過ぎのような気がする。

 

例えば野球の打者にしても、ある種のマウスピースをつけたから飛距離が伸びた、などというような単純な話ではないのです。

打つ球のスピード、変化の仕方、どのコースに投げ込まれているのか、などで打者の筋肉や骨格の動きは変わっていきます。

そのどの動きにも対応して良い結果を出すようなマウスピースは存在しないと思います。

ある動きには非常に効果的に働くが、その他の動きに対してはかえって体を痛めてしまう可能性が高い。

だから運動能力の向上を謳ったマウスピースというのは恐いのです。

きちんともののわかった歯科医師の元でないとお勧めしませんし、むしろそのような危険性があるものは避けた方が無難でしょう。

何よりもスポーツ用のマウスピース、マウスガードの一番の目的は選手の体を守ることにあるということを忘れてはなりません。

 

マウスピース、マウスガードの両者ともどうしてもその厚みがありますから咬み合わせが高くなります。

通常、咬み合わせを数ミリ(5mm以上)高くした状態で、下顎に大きな衝撃が加わったり、瞬間的にものすごい力で咬んだりしますと、頸椎に大きなダメージを与える危険性があります。

だから注意して作らないと百害あって一利なし。

素人がお湯につけて口の中に入れて咬んだら出来上がり、みたいな既成のマウスガードは決してお勧めしません。

 

途中述べた体の様々な症状を改善するためマウスピースを用いている歯科医もたくさんいます。

これには様々なタイプがありますが、通常マウスピースを装着すると咬み合わせがかなり高くなります。

すると一時的に頸椎が引き延ばされ、歪みが減少したかのようになるので、圧迫されていた血管や神経の通りが良くなります。

その結果、頭頸部から肩にかけて、さらには腰や膝に至るまでの症状が改善することがります。

ところが頸椎が引き延ばされている状態というのは、本来生体の正常な姿ではありません。

その状態を長期間維持していると、かえって取り返しのつかない問題を起こしかねないのです。

二つの骨の歪んでいる関係を牽引することにより是正することは一時的には効果的です。

しかしそれら二つの骨は本来関節を介して、きちんと機能圧が加わり適度に圧縮されている必要があるのです。

それが全身の血行に重要な影響を及ぼします。

だからこのようなマウスピースは装着した最初は感動するくらい劇的に症状が改善したりするのですが、そのうちにまた悪くなってきたり、今度は別の症状を引き起こしたりして袋小路に入る可能性が非常に高い。

僕はそのようなマウスピースを否定するつもりはありませんが、その使用には非常に慎重であるべきだと考えています。

あまり厚みのないマウスピースを使い、咬み合わせのズレを是正し、症状を改善していくというやり方もあり、どちらかと言えばそちらの方が無難でしょう。

ただし、一生マウスピースを使い続けるわけにはいかないので、マウスピースで初期症状がとれたなら、マウスピースをはずしてもその良い状態を維持できるように、咬み合わせを安定させるような治療が次に必要になります。

その際になるべく最小限の治療介入で達成したいものです。

 

最後に自分自身への戒めとなっているケースをひとつご紹介します。

70歳代のその女性は杖をついてこられ、左の下半身が常に痺れているということでした。

僕は割り箸を使って、下顎をある特定の位置にもっていき、そこで上下の歯の間に咬み合わせを決める時に用いるシリコンを注入しました。

シリコンは1分ほどで固まり、それを咬んでいる限りその下顎の位置が保たれるわけです。

下顎がその位置にあると、患者さんはまったく痺れを感じなくなりました。

おまけに杖なしでもそこそこ歩けるようになったのです。

最終的にはその位置で上下の歯が固定されるようなマウスピースを作る予定で、その了解も得たのですが、残念なことにその患者さんが再来院されることはありませんでした。

僕はその痺れがとれた状態を維持できるように、マウスピースが出来るまでの間、そのシリコンを仮に使っておいてもらおうと患者さんにお渡ししたのです。

次の日にその方の娘さんから電話があり、予約をとっていたけれども母がこけて骨折したのでキャンセルしたいとの旨でした。

つまりこういうことです。

70年かけて徐々に体の筋肉や骨格が歪んできた。

それをシリコンを使って一気に治す方向にもっていってしまった。

その是正された体の状態を今の筋肉は維持できず、結局体の動きに体がついていけなくなってこけてしまった。

今まで動かなかった方向に筋肉は動こうとするし動けるんですが、その運動中の重心の変化を支えるだけの筋力までは回復していなかったということです。

正直言って、僕が骨折させたようなもので、汗顔の至りであります。

誠に申し訳ないことをしたと思うのです。

もちろんマウスピースをお渡しした時点ではそんなことには気が回りませんでした。

こういった治療は保険の適用を受けませんので、医院によればかなり高額な費用を請求されます。

僕は当時5万円を頂いていました。

 

僕が最後に強調したいのは、どのようなものであれうまくいった事ばかり吹聴するのではなく、うまくいかなかったケースを真摯に捉え、その原因を追及するべきだということです。

すると実はそのマウスピース治療のコンセプトには重大な欠陥があることに気づくはずなのです。

そこでそれを諦めることなく改善していけばよいのに、皆、それをしようとしません。

うまくいかない場合、自分の診断が間違っていたのではなく、患者さんが悪いのだとする歯科医の何と多いことでしょう。

 

今までどこに行っても原因不明と匙を投げられていた人が、咬み合わせ治療で劇的に改善することがあるという厳然たる事実もあるわけです。

そのことを頭から否定しても始まらないのに、大学や学会は検証しようともしません。

現状はそういうところです。

入れ歯の話

最初にお金のことからお話しましょう。

保険診療の場合、ひとつの入れ歯を型採りから装着するまで歯科医に支払われる報酬は全部でおよそ33000円です。

その入れ歯を作るのに技工士さんに歯科医が支払う技工料は、うちの医院で約13000円です。

よって利益が2万円ということなのですが・・・・。

入れ歯の値段

次に平均的なテナント開業の歯科医院の経費を考えてみましょう。

家賃 30万円

受付、助手各一人の給料 各20万円

歯科衛生士一人の給料 25万円

水道光熱費、電話代 3万円

合計  98万円

診療日数20日として1日の経費は4万9千円

1日の診療時間が8時間として、1時間当たりの経費6,125円

 

あとは入れ歯を作って患者さんが痛くなく噛めるようになる調整も終了するまでにどれだけの時間を費やしたかが問題になります。

利益の2万円から、1時間当たりの経費6,125円×かかった時間=純利益

色々試算してみてわかったのですが、このかかった時間を少し変えただけで結果はものすごく変わるのです。

ですから多くの歯科医が言うように一概に保険の入れ歯は赤字だとも言い切れない面があります。

ただ、おわかりのように時間をかければかける程、赤字になっていきます。

時間をかけなければそれなりの利益はでます。

 

入れ歯の治療が下手な歯科医がすごく時間がかかってしまった場合、利益は少ない。

入れ歯の名人がやっても難しく時間がかかることがあり、その時も利益は少ない。

入れ歯が下手な歯科医が適当に治療をすれば利益は大きい。

ただし患者さんが満足するような入れ歯はできないでしょう。

入れ歯の名人がスムーズに治療できるケースでは患者さんも満足し、利益も大きい。

 

結局、一言で保険の入れ歯は儲からないとは言えないのですが、上の経費の試算はかなり少なめに見積もっている上に、歯科医が抱えている毎月の借金の返済額(通常30~40万くらいはある)も省いてあります。

ですから、どちらかと言えば利が薄い傾向にあるとは言えるでしょう。

 

これが自費の入れ歯になると、一般的な技工料金はおよそ4万から5万円位でしょう。

それに対する歯科医が患者さんに請求する金額は20万から30万だと思います。

もちろん、医院により差はありますし、そもそも技工料金が何十万もするところだってあります。

自費の入れ歯になると、普通は非常に時間をかけて患者さんにピッタリ合うように治療を進めていきます。

特に長年合わない入れ歯を使っておられた患者さんの場合、いきなり本義歯を作ってもうまくいかないことが多いので、まずはリハビリ用の治療義歯を作ります。(これについては後述します)

そのリハビリ用の義歯を使いながら、何度も細かい調整をしてお口の状態を整えていくわけですから、その調整にも多くの時間を使います。

これらがすべて治療費の中に入っていますので、単純に入れ歯がひとついくら、というような商品を売っている感覚ではないのです。

もうこうなると、入れ歯を作るという感覚ではありません。

ひとつの人工臓器を拵えていく。

患者さんが「何でも噛めます。ありがとうございます」と笑顔で言ってくださるのを目標とするわけです。

 

保険で本当に良い入れ歯など出来るはずがない。

だからといって適当なものを作って良いはずもない。

ゆえに利益の部分は度外視して、出来る限りの努力はする。

しかし保険の作り方では無理な場合もあるので、その際には自費の入れ歯を勧めるか、ある程度我慢してもらうしかない。

というところが実情です。

治療義歯と本義歯の二つが必要なわけ

合わない入れ歯を使われていた場合、歯ぐきに傷があったり、炎症があったりします。

またそういった場合、なんとか痛くないように、あるいは入れ歯が落ちないように噛もうとして変な噛み癖がついていたりすることが多いです。

それらの結果として、体自体が歪んでいることすらあります。

その状態で型採りをして最終的な入れ歯を作ってもうまくいきません。

なぜなら、最初はうまく噛めていても、歯ぐきの傷や炎症が治れば、歯ぐきの形自体が大きく変化してしまいます。

また入れ歯が安定して痛く無く噛めるようになると、変な咬み癖がとれてきて噛み方そのものが変わったり、下顎の位置や頸椎その他体のバランスも変わっていきます。

本義歯を入れてからさらに患者さんの状態が変わるということです。

ですから、これらの変化に対応するものとしてリハビリ用の治療義歯を用いることが必要になってくるわけです。

それにより、口の中や周囲、あるいは体全体に今までたまった歪みを取り、安定して本義歯を作れる状態にまでもっていくのです。

入れ歯の力

マウスピースの項でも述べましたが、噛み合わせにより様々な全身症状が改善する場合があります。

分かっている人間にとっては当たり前のことなのですが、ただそれを目的として歯科治療を行うとこれは法律的に問題になります。

だからあくまでも我々は噛み合わせのバランスを取るだけで、その結果として何かが治ったのならそれはそれで良かったですね、という話です。

入れ歯、特に総入れ歯の場合、噛み合わせはすべて歯科医師が作るわけです。

それは時に感動的な変化をもたらすことがあります。

肩こりとか頭痛とか腰痛とかが良くなるのは日常茶飯事。

曲がっていた腰が真っ直ぐになり、しっかり歩けるようになる。

高かった血圧や血糖値が下がる。

そもそも何でも噛めていわゆる口福を味わうようになるので、顔の表情が違う。

当院でも初診時に杖をついてほとんど廃人のようにして入ってこられた方が、最後には目もしっかり開いて言葉もしっかり喋り、杖は使うもののスタスタと歩かれるようになるのを目の当たりにすると、入れ歯ってスゴイなぁとつくづく思うのです。

ちなみにその患者さんは保険の入れ歯です。

それでもきちんと作ればそうなる。

その方は体がすごく歪んでいたので本当なら自費で治療義歯から始めたかったところですが、そうもいきませんでした。

自費の入れ歯だったらね、人生変わりますよ、ホントに。

だって皆さん、もっと早くやってもらっとけば良かったっておっしゃるもの。

そのかわり、満足が得られないのならお金も頂けないということです。

 

ハイブリッド義歯について

これはいわゆるインプラントと入れ歯とをうまく組み合わせて作るものです。

どうしても入れ歯の安定が難しい場合、あるいは患者さんの要望が高いレベルの場合(楽器を演奏するとか、何があっても外れないようにとか)、インプラントを埋め込み、特殊な装置で入れ歯とインプラントをつなぐ方法です。

これだとほぼ100%外れることがないし、噛む力もかなりのものです。

また下顎の骨が随分やせていて、いくら上手く作っても噛むと痛いという場合があります。

そういった時に、入れ歯が歯ぐきに向かって沈むのを支えてくれるように、インプラントを埋め込むことがあります。

この場合はインプラントを埋め込み、ただキャップをしておくだけですが、これだけで全く痛みなく硬いものが噛めるようになります。

これは当院でも時々やります。

インプラントを使わずに済めばそれに越したことはないのでしょうが、もっと上を目指される場合、あるいはそうでないとどうしてもあと一歩が上手くいかない場合には非常に有効な手段です。

良い入れ歯を作りたいがどこに行けばよいのか?

これすごく難しい問いです。

入れ歯が得意な先生は、ホームページにその旨を書いておられるでしょう。

自費の入れ歯の作り方にも様々な方法があり、どれが良いとは一概に言えません。

あと10年くらいすれば歯科界の中でかなり整理されてくるだろうとは思います。

インプラントを否定される先生もいらっしゃいます。

インプラントを上手く利用した入れ歯を作る先生もいらっしゃいます。

何が何でもインプラントだけで治療し、入れ歯など噛めるかい!というスタンスの先生もおられます。

入れ歯かインプラントか?

僕の考えでは、それはその患者さんの口の中の状況により、どちらがより長く良いバランスを保ちながら口の中で調和していけるか?によります。

また患者さんの出しているエネルギーも参考にします。

何となく、この人は入れ歯の方が良さそう、という場合もあるということです。

 

ホームページで大々的に入れ歯が得意みたいに書いていたけれど、実際に大金はたいて作ってもらったら全然噛めない、ということだってあり得ます。

かと思うと、ホームページすらない普通の町の歯医者さんが、ドエライ入れ歯名人だったということだってあるんです。

こればかりは何ともアドバイス致しかねます。

小児の治療について

小児の治療

小児歯科の大きな目的は健全な永久歯列の獲得にあります。

永久歯がきれいな状態で正しい位置に生えてきて、上下の正しい噛み合わせが達成されること。

乳歯の虫歯治療は、痛みを除き機能回復をするという目的だけではありません。

乳歯がきちんとした形を保って、正しい位置にいてくれないと、後から生えてくる永久歯の位置が全部狂ってくるのです。

顎の中に眠っている永久歯は、上にいる乳歯の位置を頼りに生えてくるのですね。

むしろ乳歯の虫歯治療の目的はそちらにあると言っても過言ではありません。

 

せっかく永久歯が正しい位置に生えてきても、すぐに虫歯になるような口の中の環境であれば、やはり歯並びや噛み合わせが悪くなってきます。

だから乳歯の時に、きちんとした食生活や食事指導、歯ブラシ指導などをするのです。

乳歯が虫歯になっても、どうせ後から永久歯が生えてくるから治療しなくても良い、などとは決して思わないでくださいね。

そういうことですと、結局お子さんが大きくなってから困ることになるし、お金も時間も余計にかかるのです。

子供の時に気をつけるべきこと

生活習慣上、世間で言われるような常識はここでは省略します。

その上での注意点をいくつか述べておきます。

・呼吸法について

まず最も大切なことは、鼻呼吸の確立です。

今は鼻で呼吸が出来なくて、口呼吸をしている人が非常に多い。

これは万病の元です。

歯並びも悪くなるし、何よりも空気中の不純物(細菌、ウイルス、塵、花粉等)が口を常に開いていると直接喉に行くので、咽頭周囲の免疫系が破壊されます。

鼻の通りが悪くなりアレルギー疾患にもかかり易い、風邪もひきやすいし、免疫力が低下するので様々な病気を引き起こします。

集中力も低下するので、成績も低迷しやすくなります。

たかが呼吸なのですが、これを改善するだけで世の中のどれだけの病気がなくなることでしょう。

 

こうなっている原因の一つに離乳食を与えるのが早すぎる というのがあります。

母乳を吸うのはすごく力が要りますが、それにより赤ちゃんは口の周りの筋肉を鍛えるとともに、胎児の時の鰓呼吸(口呼吸)から鼻呼吸へと移行していくのです。

それがいつの頃からか誤った育児法が横行し、離乳食が早ければ早いほど良いみたいになってしまいました。

(これについては「オッパイだより」にも書いてあります)

赤ちゃんが飲まなくなるまで、出来る限り母乳を続けるのが良いのですよ。

 

もう一つの原因として食事中のおしゃべりがあります。

家族の団欒という観点からはマイナスなような気もしますが、食べながら喋る癖がつくとこれも口呼吸を誘発します。

少なくとも口の中に食べ物がある時は口をしっかり閉じて、真っ直ぐな姿勢あるいはややうつむき加減でよく噛んで食べる。

これがものすごく大切。

あくまでも食事の習慣をきつんとつける幼少期において、それが強調されるべきであるということです。

現実問題は色々難しい面もあるでしょうが、その結果重度のアトピーとかになって悩むよりはきちんとした食習慣をつける方がよくないですか?

今にして思うのですが、乳児の授乳と幼児から小児の時の食事というのは、その後の一生を左右する鼻呼吸の確立のためにあるのではないか、ということです。

・姿勢と舌位

考えてみれば僕が子供の時は低い食卓の周りに座布団を敷いて正座して食事していました。(大人は胡坐)

正座は脚にとってかなり負担となるのでそういう意味では良いとは思いませんが、少なくとも姿勢は良くなります。

子供が小さい間はどうしたってお母さんの方が気になりますから、お母さんは大変でしょうが子供の食事中は前に座ってあげるのが理想的でしょう。

テレビを見ながらの食事なんて論外、とにかく食べながらキョロキョロしないことが大事なのです。

これらをやってしまうと、そういう歪みを身体の関節や筋肉に抱えたまま成長してしまい、後からは修正が効かないのです。

椅子に座って食事する場合、きちんと足が地に(足板でも良い)ついていることが重要

足が宙に浮いている状態だと、背中は猫背になり顔を上方かつ前方に突き出したような姿勢になります。

この姿勢だとどうしても口呼吸になってしまい、また奥歯でしっかり噛むということができません。

これも見逃されやすくかつ、大切なことがらです。

そのために机や椅子の高さ、足の踏み台の調整などを工夫してみましょう。

僕は幼児期の食事の姿勢がすべてじゃないかと考えています。

足をブラブラさせるような状態が多いのではないでしょうか?

歯並びが悪くなる大きな原因に口の中における舌の位置があります。

本来、安静時には舌の先1/3くらいは上顎の前歯の裏側の歯ぐきに接しているものなのです。

それが口の中で低い位置、つまり舌が平行になって舌先が下の前歯の裏側あたりにきている子供が非常に多い。

顎の骨の中で歯の位置というのは、表側から頬の筋肉と口唇の筋肉による圧力、そして裏側から舌の圧力、この二つのバランスによって決まります。

だからこそ、口を閉じてよく噛むことにより表側の筋肉を鍛え、舌を誤った位置に誘導しないようにしなければいけません。

(口を開いて食べると舌は低い位置をとりやすくなります)

普段の姿勢も舌の位置に関係します。

猫背になると舌は前方かつ下方に位置しやすくなるのです。

 

もうひとつ歯並びが悪くなる原因、それは離乳食の後、自分で食べるようになったときに多くの場合スプーンか先割れスプーンなどを使うと思いますが、その際にお皿やお茶碗を口元に持って行くことなく、お皿に口を近づけて食べてしまいがちなことです。

姿勢は猫背になり、その結果上で述べたように歯並びが悪くなります。

背中に一本筋が通ったようなスッとした姿勢で、左手にお茶碗、右手にお箸というふうには中々いかないのでしょう。

もちろん1歳から2歳くらいで、そんな姿勢をとるのは無理でしょうから、こちらの言うことが理解できて実行できるようになれば早期に是正する必要があります。

外国ではどうなんでしょうね?

もしかしたら畳や床に座るのと椅子に座るのが混在する文化と、イスやソファに座るしかない文化とはその姿勢に対する影響が違うのかもしれません。

乳歯の虫歯治療について

ここではあくまでも当院における考え方を記します。

時に2歳や3歳の幼いお子さんが来られることがあります。

あるいは6歳くらいでも歯医者さんが(知らない人が)恐いというお子さんもいます。

僕はその子達に出来るだけストレスを与えないように治療をしたいと考えています。

泣いて嫌がる子(今は随分少なくなりましたが)を無理にきちんと治療するよりは、その子がもう数年経った時に普通に治療が受けられるようになる下準備であれば良いと思っています。

ですから場合によっては、ごまかしのような治療をすることもあります。

もちろんすべて保護者に対する説明と理解の上で進めます。

 

たとえば大きくはないが小さくもない虫歯があるとしましょう。

そのお子さんが歯医者さんに来るのは初めて。

様子を見て、全く問題がないようなら普通に治療しますが、麻酔などは使いません。

麻酔というのはある程度歯医者さんに慣れてから、ある程度の年齢になってからじゃないと当院ではやりません。

 

虫歯を削る器械を嫌がって口の中に入れさせてくれない子の場合で、手用器具(ミラーとかピンセットなど)は大丈夫な場合、スプーンエキスカベーターと呼ばれる小さな耳かきのようなもので虫歯を取り、樹脂をつめていきます。

切削器具が使えないわけですから、多く詰め過ぎたりしないように気をつけます。

でないと後で調整ができませんから。

 

それもダメな子の場合、虫歯をほとんどとらずに樹脂を詰めます。

中には空気をかけて乾燥するのも嫌がる子もいるので、そういう場合は綿球にサホライドと呼ばれるフッ化物を塗布します。

とにかく治療台に上がって、頑張って何かが出来たという実績を作ってあげるように心がけます。

 

口すら開けない子、治療台にも上がらない子、この場合は家庭における親子関係に問題があるか、すでに歯科治療に対するマイナスのイメージの刷り込みが行われているので、如何ともしようがありません。

痛ければご飯が食べられない。

でも自分が治療を拒否したのだから仕方がない。

これを本人に経験してもらうしかありません。

これを無理に押さえつけて治療したりはしません。

そんなことやらない方が良いに決まっていますから。

 

ところが、子供の虫歯というのは一時的な痛みが治まればすぐに神経が死んでしまって本人に自覚症状がなくなるのです。

だから痛みを訴える子というのは、多くは他の歯がきれいで少し虫歯になったからわかるのであって、虫歯だらけになってしまうと痛みなど感じないのです。

こうなるとネグレクトの疑いになってきますが。

あるいは子供が嫌がることはやめておいてあげよう(無理に歯医者にかからせなくても良いという意味)という、間違った親心の結果という場合もあります。

何にせよ子供の虫歯の向こうに見えるのは親子関係以外の何ものでもないということです。

 

子供の場合、小さなむし歯であれば徹底除去します。

ある程度大きくなり、麻酔なしでは痛みを感じると判断すれば、痛みなく取れる範囲でしか除去しません。

こういったことが可能なのは、次の理由によります。

虫歯を削った穴に樹脂を詰める場合、樹脂と歯を接着するための接着剤を間に塗布します。

今はその接着剤の中に抗菌物質が入っているものがあるため、多少虫歯を取り残してもほとんど問題が起こらないのです。

そうであるなら、虫歯の全部除去にこだわって子供に痛みを与えるよりは、少しくらい残してもおだやかな治療をする方を優先したいと考えています。

ちなみにこの抗菌プライマーが入った接着剤は、現在、大阪大学歯学部歯科理工学講座教授の僕の同級生の今里聡先生が開発されたもので、非常に重宝している材料です。

 

ただし虫歯をある程度残すわけですから、いくら抗菌剤入りの接着剤を使うとはいえ万全ではありません。

もしかしたら虫歯が進行して神経が死んでしまうかもしれないし、詰めた樹脂が数カ月で取れることだってあります。

永久歯の場合は極力神経を残すように努力しますが、乳歯の場合は神経が死んくれたらあとは痛みなく治療できるというメリットもあります。

詰めた樹脂が取れても、その度に詰め直せば良いわけで、きちんとした治療にこだわって子供にトラウマ残すよりは僕は子供にとって優しい治療が良いと考えます。

何度も申し上げますが、起こりうる可能性はすべて保護者に説明して了解の上で治療を進めます。

 

このようなスタンスで治療していると、あれだけ泣いていた子が2,3年すれば治療に対して非常に協力的になり、平気で麻酔だって打たしてくれるようになるものです。(麻酔で子供に泣かれることはほとんどありません)

繰り返しますが、小児の治療の大きな目的は健全な永久歯列の獲得です。

そのために最初からきちんと正確な治療にトライするのもひとつの方法でしょうが、子供の成長を待ちながらその時出来る最大限の治療をするというのも悪くはないと思うのです。

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