最近、マジな話が多いっすねぇ。

医科における診療科目の細分化の弊害については言われて久しいです。

歯科においても専門医化の傾向があり、歯周病専門医、根管治療専門医、補綴専門医そして矯正専門医などが連携して一人の患者さんの治療にあたろうという流れがあります。

ただ、現在のところ各専門医が大きな診療所を共同経営するスタイルは日本ではまだ少なく、患者さんは違う場所にある各専門医間を行き来しないといけないのが現状でしょう。

医科の場合はひとつの病院に各専門外来や病棟があるものの、各科の連携というのはないに等しい。

内科医が耳鼻科医に患者さんのことについて照会するなんぞ聞いたことがありません。

なぜなら病院における初診は、患者が自分で自分の調子の悪い部分の科を選択するからであり、だからこそ本当の原因を追及することなく対症療法しかなされないのです。

本来なら、患者さんをまるごと診察できる医師が初診に当たり、実際の専門的知識や外科などの技術がいる場合は、そちらに紹介しかつ、初診に当たった医師と専門医が話し合って最終診断および治療方針の決定がなされるのが当然です。

こんな当たり前のことをきちんとやっている病院は少なくとも僕は知りません。

僕は病院なんか行かへんし、知らんだけかもしれませんけど。

わが大阪大学歯学部付属病院においては、初診は毎日各科持ち回りで助手以上のドクターがあたり、患者の話を聞いて相応しいと思う診療科にまわします。

このシステムは僕が在局していた時からあり、そのコンセプトは素晴らしいのですが、いかんせん初診を受け持つドクターの知識・技量は?

あくまでも総合診断という観点からすればという話ですけど。

 

口やそれに関連する組織・器官は身体の一部なわけですから、歯科という”歯だけ”みたいな科目の分けられ方はおかしいに決まっています。

内科や耳鼻咽喉科があるように、(顎)口腔科というのがあるのが当然です。

それがどこかのバカのおかげで現在のような状況になってしまい、世間で歯医者と言えばあまり良いイメージを持たれません。

外国ではダブルドクターが当たり前のところも少なくなく、まずは医師免許を取ってからさらに勉強して歯科医の免許を取る。

専門医になるにはそこからまだ研修を積むわけです。

だから非常に長い月日がかかりますが、収入も多いが人々に尊敬される職業であり、学生たちの競争率は非常に高い。

歯学部の定員割れや国家試験の史上最低の合格率を更新している日本とはえらい違いです。

なにより国民が不幸になります。

今の日本の歯科医は単なる技術職で、入れ歯が上手いとか、虫歯の治療が痛くないとか、そんなレベルでしか見られていません。

食べることが人間にとって非常に大切、食べることで脳が活性化する、口は命の入り口などといった陳腐なことじゃないのです。

本当に口腔科こそが、医科における中心なのだと僕は信じて疑いません。

本来、口腔科医が患者を総合診断し、必要な科を紹介するというのが筋です。

それはなぜか?

昨日も書きましたように、身体のバランスを崩すのは誤った食生活、生活習慣、身体の使い方によります。

文字通りバランスを崩すのです。

ここでいうバランスとは生体力学的な観点です。

身体をひとつの生体力学モデルとして扱う時、最も重要なのが顎口腔系に他なりません。

だからこそ口腔科医が上位に位置するのです。

 

木造住宅で、シロアリがどこから食い始めるでしょうか?

こんなもの、水周りに決まっています。

なぜなら、水分の多いところは木がふやけて侵入しやすいから。

あるいは、水周りでなくても構造的弱点のある所、木が膨張したり亀裂が入ったりしやすい所。

シロアリをバクテリアに置き換えてみてください。

確かに虫歯や歯周病に限らずウイルスや細菌を原因とする様々な感染症がありますが、それが発症するためには宿主が何らかの形で身体のバランスを崩していることが必須であります。

だから風邪ひく人とひかない人がいるわけね。

 

僕はそのような観点で患者さんの口や身体を診ています。

診てはいますが、僕は医科の勉強を(歯学部で習う程度以上には)したことがないので、口腔科医などとは名乗れません。

今さら医学部に入るガッツもありません。

真の口腔科医とは彼の西原克成先生のような方のことをいうのでしょう。

僕は今、西原先生の著書を片っ端から読んでいます。

悲しいかな、こういった王道を行かれる方は大学や学会から変人扱いされ干されてしまうという、ホント困ったものです。

 

ここではっきり申し上げておきますが、日本人の平均寿命が延びたのには、ひとつには新生児や妊産婦の死亡率が激減したのと、もうひとつには良くも悪くも国民皆保険制度により国民の口の中の健康状態が大幅に改善したからです。

特に口腔の衛生状態の改善が大きな意味を持ちます。

昔もね、楊枝などで口を漱ぐ習慣はあったわけですが、口の中の細菌を除去するという感覚はありません。

もし身体のどこかに異常をきたすと、口の中の特定の細菌が血行性にその異常部位に運ばれ、そこで繁殖することによって非常に難治性となり死亡に至るというのが多かったのです。

これを”病巣感染”と言いますが、これに対する認識はまだまだ低いです。

 

細菌もウイルスも決して悪者ではありませんが、はるか大昔に世界が変わってしまいました。

攻撃するものとされるもの、食うものと食われるもの、というふうに対極化してしまったのです。

ちょっと想像つかないかもしれませんが、ライオンやトラが小動物を襲わない、草食だった時があったのです。

そんな時代にいきなり戻れるわけはありませんから、現状とすれば口腔内のバクテリアコントロールというのは健康上、非常に重要な意味を持ちます。

 

今、日本は高齢化が進み介護の問題が出ていますが、おわかりでしょうか?元気で長生きするために最重要なのが、口腔の健康なのです。

これからの日本人の健康は歯科医なしではあり得ません。

 

歯科が口腔科として医科の中に統合される日は、ずいぶん遠いと思いますが、そうなって欲しいものだと心底思います。

でもね、これ誰が反対するかというと、当の歯科医たちなんだよなぁ、きっと。

2012.5.31