入れ歯の世界では100年前と全く進歩がないと言いましたが、現在ではインプラントを利用したりマグネット(磁石)を利用したりと、新しいものがあるにはあるのです。

ただそれは完全に自費診療の世界で、かつ入れ歯の概念そのものを変えたわけではありません。

ところが、ある特殊なタイプの入れ歯があり、それは入れ歯についての考え方そのものを根底から覆しました。

 

従来、入れ歯というのは垂直方向に出し入れするものであり、その着脱方向と食事や会話中に入れ歯が外れる方向が一致しているというものでした。

そのためバネであろうがマグネットであろうが、その垂直方向の脱離力に対していかに対抗するかという点に主眼が置かれていたのです。

その基本的概念を覆したのがその入れ歯です。

 

バネがないのが特徴なのですが(バネのように見えるものを使うこともある)、いわゆるノンクラスプ義歯(バネのない入れ歯)と言われるものとは全く違います。

当院ではノンクラスプ義歯というのを何個か作製しましたが、そしてお金をもらっておいてこういう事を言うのもなんですが、あれはダメです。

バネがないので審美的な面では良いのですが、ただそれだけであり、どんなものでもしっかりと噛めるという点においてはかなり劣ります。

今お話している入れ歯はそれ自体が残っている自分の歯をしっかりと固定し、またその歯が入れ歯を固定するというものです。

そして特別複雑な装置を使わないため、自分の歯も虫歯とかがない限り特に入れ歯を入れるために処置する必要がありません。

ある事情により、このタイプの入れ歯を当院では扱えなくなりましたので、少し奥歯にものの挟まったような書き方になっていますがご了承ください。

 

さて、もうひとつ同じようなコンセプトの入れ歯が存在します。

それはMTコネクターと呼ばれるものです。

それについての詳細は開発者の宮野氏のHP(大阪歯科センター)をご覧ください。

来月初めの月曜日に当診療所を休診して、大阪歯科センターの入れ歯作りを見学に行くことになっています。

これの最大の特徴はとにかく入れ歯が小さくて軽くて薄いということでしょう。

いわゆるバネはありません。

バネのように見えるものは存在します。

 

実は僕は3年くらい前には先にこちらの方を取り入れていましたが、理由があってその臨床応用を中止していました。

今また新たに導入し直そうと思っていますが、その際に大切なのは僕がMTコネクターを十分に理解し、応用できることであるということに気づきました。

かつてその使用をやめた時に問題だったのは、MTコネクター自体にあるのではなく僕の理解と応用の仕方にあったのです。

だからこそ診療所を休診してまで見学に行くわけです。

 

僕はもう入れ歯に関してはMTコネクターのことしか頭にありません。

あとはインプラントを使ったハイブリッド義歯くらいでしょうか。

保険の入れ歯には全く興味がありません。

だって、保険のシバリがあるので勉強した内容を盛り込みようがないからです。

またバネをかけている歯はいずれ必ず弱ってきます。

でもそういう設計でないと保険で認められないんだから仕方がない。

 

おかしいと思いません?

歯にとって悪いのがわかっているのに、そうせざるを得ないって。

ただそういった状況の中でできるだけ良いものを提供したいと、これは誰しも思うことなので、近々保険の義歯を依頼している技工所を変えようかと考えています。

総入れ歯に関しては作っていく過程で、型どりの仕方や噛み合わせのことなど新しい知識が応用可能な部分があるので、それに関してははどんどん導入しています。

しかし入れ歯の設計や使う装置などが限られる部分入れ歯では、出来ることが限られています。

 

さて、実は以上書いてきたことは余談なのでして、昨日のブログから続くこの記事で僕が本当に言いたかったことは、これからお話しすることなのです。

最初にお話しした特殊な入れ歯もMTコネクターもそれぞれに素晴らしい発想ですが、それぞれ長所と短所がやはり存在します。

もう少し正確な言い方をすると、それぞれが相手より、より優れているところが存在するということ。

つまりお互いに合体したらさらに素晴らしいものができるのに、ということなのです。

 

ところで驚くことに、これら二つの革新的な義歯はどちらも大阪の平野という下町で生まれています。

日本中に歯医者なんてごまんとあるのに、こんなことってあるんですね。

僕は歯医者になってから今までの24年間に幾人かの師と呼んでもいい先生方に教えを請うてきました。

皆さん非常にオリジナルな考え方と治療法を持っておられました。

それを教えてもらう際、もちろん安くない受講費がかかりますが、それとともにその話をよそで口外するのを禁止されることが少なくありません。

中には講義の内容を絶対に外に漏らさない旨が印刷された誓約書にサインと印鑑まで押させる方もいらっしゃいます。

それをしないと教えないと言うんだから仕方ないんですけどね。

昨年ノーベル化学賞を受賞した鈴木章氏みたいに、あれだけの研究成果に対し特許を取らない人なんて極めて稀なんです。

 

その先生方の言い分はこうです。

あっちこっちで流布されて、自分の知らない所で間違ったやり方考え方で行われ、本来の自分の考え方までに誤った評価を下されるのが嫌だ。

わかるんですけどねぇ。

でもね、この先生が気にしているのは自分の評価ですよね。

もし広い心で自分のオリジナルという感覚を手放せば、本当に良いものならいろんな先生によって開発者では思いつかなかったような発展を遂げる可能性だって十分にあるんです。

元々その先生方は「患者のため、歯科界のため」と言ってたはずなのに、アレ?言ってることとやってることが違うじゃん。

 

こういう人たちは大体そのテクニックなり考え方なりに自分の名前をつけ〇〇式とか〇〇法とか言ってます。

例え、自分の名前が下がろうがいいじゃない。

本当にみんなのためを思うんだったら、そんなとこにこだわってたって仕様がないでしょう。

その面においてみんなもう少し大人になってくれたら、と思う今日この頃。

ちなみに本日のupが遅くなったのは体調のせいではありませんので、念のため。

2011.1.25