関西には「必死のパッチ」という言葉があります。

一所懸命、必死で何かをする、ということなのですが、パッチという語がつくことで、関西人にはその様相がリアルに伝わるのです。

NHK朝の連ドラ「カーネーション」

コシノ三姉妹の母親である小篠綾子さんをモデルにした話ですが、綾子さん役の小原糸子が明日の朝までにパッチ100枚という仕事を引き受けてしまいました。

さあ、どうなるんやろ?と思って見ていると、結局は家族の助けもあり無事納品。

もしかしたら「必死のパッチ」という、なんでパッチやねん!みたいな言葉はここから来てるんちゃうかと思いました。

 

以前にも書いた気がするのですが、本当の真実が見つかる過程というのについてご説明したいと思います。

一応専門分野での例となりますが、歯と歯の間に虫歯ができたとします。

右の前歯の隣の歯と接する部分にできたのですが、そこと接している左の前歯には虫歯がありません。

お互いに接しているはずなのに、片方には虫歯ができて、もう片方は無傷。

これはどうして?

広島で勤務していた時に、ある患者さんの治療をしながらこのことを疑問に思ったのがすべての始まりでした。

 

そしてそのごく当たり前の疑問に関して、歯科のどのような本にもどのような講義でも語られてはきませんでした。

いいですか?

何十年も、もしかしたら100年以上も、誰だって疑問に思うはずのことが触れられずにきたのですよ。

これ、おかしいでしょう。

一体、先達たちは何をしてきたのか!と問い詰めたくなります。

疑問に思ってから学ぶのではなく、知識を詰め込むことを強要するからこんなことになるんだと思います。

 

さて、その時よく観察してみると虫歯になっている部分のエナメル質にわずかな亀裂があるのに気づきました。

相手の下の前歯を見ると、少し斜めになっており、その飛び出た歯の角の部分がちょうど上の前歯の虫歯になっているエナメル質のところ(すなわち亀裂があるところ)に噛みこんできていました。

そこでふと考えたのです。

もしかしたら、噛み合わせによって力が集中する部分のエナメル質に微小な亀裂を起こし、そこから細菌が侵入して虫歯が発症するのではないか?と。

ある程度進行した虫歯は通常、表層のエナメル質よりも内層の象牙質部分においてより拡大しやすい傾向にあります。

それは酸に対する抵抗性の違いもあるのですが、虫歯菌はまずエナメル質の亀裂の部分からスッと中に侵入し、そして内部の象牙質で拡散していくのではないかと推察しました。

ここまでが仮説の第一段階です。

 

このことを念頭において、それから様々な患者さんの口の中を観察してみると、確かに相手の歯の当たり方が他よりも少し強かったり、あるいは歯の構造的に弱い部分に当たっていたりすると、そこには必ずといってよいほど微小亀裂が認められ、歯の僅かな脱灰(歯の表層が溶けること)から進行した虫歯まで程度は様々ですが何らかの付随する結果がそこに観察されたのです。

この時に大切なことは、仮説を押しとおすために観察する事実を曲げないように、都合良く解釈しないようにすることです。

これをしちゃうと、すべて台無し。

 

もし、仮説に符合しない事実があるなら、その仮説は破棄せず頭の隅に置いておいて、さらに観察を重ね考察すれば良いのです。

その結果、仮説が間違っているなら棄却、少し足りないのなら修正するようにします。

例外というのはナシ。

世にまかり通っている科学的事実というのはおよそほとんどが例外を含みます。

そんなものは宇宙的な真実ではありません。

五匹のラットのうち3匹がある傾向を示せば、それが実験上の結果、真実となる世界です。

騙されてはいけません。

だからEBM(Evident Based Medicine 科学的根拠に基づいた医療)というのは、半分正しくて半分間違っているというのです。

 

僕の場合は観察した事実はことごとく仮説を支持するものでしたが、それだけではなくもっと色んなことがわかってきたのです。

他の箇所(歯)よりも当たり方の強いところは、亀裂に伴う虫歯だけでなく、歯ぐき近くの歯がくさび状に実質欠損するクサビ状欠損や、歯ぐきの出血、腫れとも関係していることが明らかになってきました。

仮説がより広がりを見せ、より強固になっていったのです。

これが仮説の第二段階。

一般には虫歯は虫歯菌が原因、歯周病は歯周病菌が原因とされています。

でもそれなら、虫歯になる歯とならない歯、歯周病が進行した歯と健康な歯が一人の患者さんの中で混在するのはどうしてでしょう?

 

歯科界においては、虫歯に関しては酸によく触れる場所、唾液の自浄作用の働きにくい場所、歯ブラシの届きにくい場所がなりやすいのだとされ、歯周病に関しては部位特異性、つまり場所により歯ぐきの中で起こる免疫反応が異なるため、それによる組織の破壊の程度や炎症の段階も異なるのだ、とされます。

それらに噛み合わせが関係しているなどと言うと言下に否定され、「科学的根拠は?」とか「そのことについて言及した論文を示せ」とか言われ、最終的には鼻で笑われます。

心の中ではこっちが相手のことを笑ってるんですがね、考えてもみてください、そのことについて誰も触れてこなかったから、僕がここで問題提起をしているわけでしょ。

それもね、僕は自分の考えが正しいなんて言っちゃいないんです。

こうとしか考えられないのですが、如何でしょう?ということを言ってるだけなんです。

これが学会での多くの人の反応であり、こんな土壌からどんな新しいものが生まれるんだ!と思ってしまう所以であります。

 

細菌というのは口の中のどこにでもいます。

であれば細菌は生体のどこから侵入しようとするでしょう?

構造的に弱いところ、組織の隙間のあるところに決まっているでしょう。

それらを作り出しているのが噛み合わせによる特定の部位への力の集中だと、ずいぶん前から訴えてきました。

もちろん何でもかんでもそうだとこじつけるつもりはありません。

しかしながら、僕が最初の疑問を感じてから20年近く経った今、僕の中ではそれらはもはや常識となり臨床に活かされています。

単なる観察から、それが診断および治療や予防に活かされて、これにて仮説の第三段階完了となります。

 

先ほども述べましたが、僕が本当に言いたいことは僕の仮説の正しさではないのです。

なぜ特定の部位にその症状が起きたのか、その原因は何かを考えることなく治療だけしていては何も進歩がないし、予防に結びつかないということと、

もう少し口の中をよく観察すれば、自分で何かを発見できるのではないですか?

という2点です。

少しだけ噛み合わせ、あるいは力の集中という視点を持って観察するだけでよいのです。

 

残念ながら、いまだ歯科ではこういう考えは普及していません。

ところが日本の歯科界でもトップレベルと思われる青山でご開業の内籐正裕先生はご自身の講演で噛み合わせとそれにより起こる歯の亀裂と虫歯についてお話しされています。

僕がそれを初めて聞いたのは、僕が最初に疑問に思ってから数年経っていましたから、僕と内籐先生のどちらにプライオリティ(どちらが先かということ)があるのか知りませんし、そんなことはどちらでも良い話なのですが、僕が「はあ?」と思うのは、そういうことを僕が話すと信じなくて、内籐先生が話すと信憑性を増すという点です。

聴衆である歯科医たちに対して 「おまえら、頭の中スカスカかっ!」 と思っちゃうのね。

 

なお、噛み合わせが引き起こす口の中の現象についてはサイドメニューの論文の項で過去に紙上発表したものを掲載してあります。

 

本日、夜に大阪で同窓会があります。

同窓会といっても小学校の同窓会です。

卒業してもう37年。

前に開かれたのがおよそ10年前でした。

その時、受付を済ませ会場に入って行った僕を見て、先に来ていた同級生の女どもが「西塔君、どうしたん!?」と口をアングリさせて言いました。

「おまえらね、20数年ぶりに会うて、『どうしたん?』はないやろ。俺はいつも進化(退化?)しとるんじゃ」と返したことを思い出します。

結局その後、みんなで二次会に行って、さらに残った女子3人と布施というド下町で朝まで焼き鳥屋、寿司屋とハシゴしたのでした。

 

あれからさらに10年分進化した僕を見て、同級生たちは何というでしょうか?

楽しみというより、怖いわ、ちょっと。

今回は大阪のミナミで開かれますが、僕は明日の朝が早いので今日はあまり遅く(朝早く?)ならないようにするつもり。

あくまでも、つもりであります。

嫁さんも半分信じてません(笑)

 2011.11.5