学び舎~Memories of You~

我々歯科医は、日々オーソドックスな治療をいかにより安全、確実かつ効率的に行うか研鑽しています。

そのために新しい器材やテクニックを導入します。

それと同時に最新の治療法についても通じていなければなりません。

最新のものが常に良いとは限らないので、それらを慎重に吟味し必要なら臨床に取り入れます。

時には新しい云々ではなく旧来の概念を覆すようなものが登場することがあります。

MTコネクターなどはそれに属すでしょう。

義歯という非常に古くからある分野の新しい概念、昨日の見学はそういったものでした。

 

僕は大学で数年間、学生教育に携わっていましたが、その時教えた学生たちも今やベテランの歯科医です。

僕自身は歯科医になって25年目。

そろそろ心が錆びついてきます。

変なプライドが埃のように積もってきます。

当時の学生たちが今や立派になって研修セミナーの講師を務めてたりします。

僕は果たして、彼らにお金を払い、時間を使い、頭を下げて教えを請うことが出来るのだろうか?

昨年の暮れにそう自分自身に問うたのです。

今のままではいけない。

あらゆるプライドを捨てよう。

今年の勉強のスタンスはそれです。

相手が誰であっても真摯に教えを請う。

人間、そうありたいものだと思います。

 

昨日見学に行った大阪歯科センターは平野という町にあります。

最寄りの地下鉄の駅から歩いて15分から20分くらいかかります。

そして保険は一切扱っていないにもかかわらず、入れ歯でお困りの方がそれこそ全国各地から来院されます。

昨日もお一人、東京から来られてる方がいらっしゃいました。

 

見学は午前中のみで、午後からは別の先生が見学にみえてました。

さて、朝、地下鉄の平野駅から歩いている最中に思ったのですが、見学が終わったら僕の母校を見に行こう。

僕は大阪教育大学の附属平野中学、高校出身です。

久しぶりに訪ねてみたいと思ったのです。

大学の中身は現在移転してしまっているので、ほとんど廃校のような状態。

大学の隣に附属の小学校があり、道をはさんで中学、高校があります。

 

歩いていくと、すごく懐かしい風景。

その辺りは昔からの下町なので、いまだに当時のままの家がありました。

あそこに〇〇の家があったんやけど・・・・ああ、あるある!

表札もかかったままやから、誰かまだ住んではるんや。

この路地を入ったとこが、確か△△の家。

悪いやつのたまり場になっていて、酒飲んで麻雀しとったなぁ、あいつら。

そういえば鶏の処理場があったのは、このシャッターが下りてるところか。

昔は青いビニールシートがかかってあって中を覗けないようになっていたのですが、首を落とされ羽根をむしられた鶏が束になって透明のビニールの袋に入って、ビニールシートの下の隙間のところに置いてあったのです。

当分鶏肉食べれませんでした。

その隣のお店には当時人気だったアグネスラムの水着のポスターが貼ってあり、僕は登下校時に意味不明にラムちゃんに向かってお辞儀をしていたのを思い出します(笑)

中には元々ボロ家だったのが、もう朽ち果てるような廃屋になっている所もありました。

 

学校の門の近くまで来ると、中から車が出てきて守衛さんが門の開閉をしています。

あれ?今は守衛さんが、それも2人もいるんや。

あ!

そうです、附属池田小学校の事件です。

大阪教育大学の附属には天王寺、池田、平野の3校があり、当然それぞれ姉妹校です。

・・・・・・・

その時、僕は広島駅へ向かうタクシーの中でした。

以前勤めていた医院にインプラントのオペを見学に行った帰りです。

新幹線口のタクシー降車場に着く寸前にラジオからそのニュースが流れてきました。

僕がラジオのニュースを聞いて衝撃を受けたのは後にも先にもあの時だけです。

児童の中に犠牲者が何人かいるというのも、とても現実のこととは思えませんでした。

「ええっ!」

そのうち、知り合いの女性からメールでそのことについて知らせがありました。

彼女もひどくショックを受けていたのですが、僕は「さっきラジオで聞いた」と返信したものの、やはりそうなのか、とひどく落ち込んだのです。

出身校の姉妹校の小学校で起こったというのが衝撃を何倍にも増幅させました。

 

その影響で、我が母校も警備体制を強化したのでしょう。

大きな鉄の扉のてっぺんには矢じりのようなものがついています。

なんだかかえってその恐怖心が曲者を呼び寄せるような気がするんですけど。

門を閉めかけている守衛さんに話しかけました。

「すごく厳しいですね。僕、ここのOBなんですよ」

「中に入ってご覧になりますか?」

「いえ、ここからで結構です」

 

今から37年前の4月です。

この校門を母親と一緒に不安と期待に胸をときめかせてくぐったのは。

あの正面玄関の前で、丸坊主姿の少年たちと、セーラー服の少女たちが校長、教頭、担任と少し着飾った母親と一緒に少しむずかしい顔をしながら記念写真を撮ったのです。

そしてあの樹の下で学年で2番目に可愛い娘と座って話した時の胸の高鳴り。

思わず涙が滲んだのでした。

でもその時から37年後に、大人になった僕が校門の前に立つこともきっと決まっていたんだろうなぁ、と思うと不思議な感じです。

 

3校の統廃合が話題になって久しいのですが、できればこのまま僕の思い出をおいといて欲しい。

そう思うのであります。

2011.4.15

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