ガンになるということ ~後編~

今年になって、当院に口腔ガンの疑いのある患者さんが2名いらっしゃいました。

うち一名はすでに確定診断がついています。

ご高齢のこともあり、手術は行わない方針だそうです。

うちでは同級生がいる関係もあり、こういった場合は奈良県立医大付属病院の口腔外科を紹介しています。

「〇〇ガンの疑い」と紹介状に書くわけですが、ことこれに関してだけは僕の誤診であって欲しいと心から願うのです。

しかし、僕のような一般開業医がそれを疑うということは、見た目ですぐそれとわかるわけで、残念ながら間違うことは少ないのです。

紹介状を渡した患者さんが今ごろどんな気持ちでいるだろうと考えると、さすがにこちらも落ち込みます。

僕が普段通りの生活をしているだけに、対照的であろう患者さんのことを思うとつらいのです。

 

ヒーリングでガンが縮小したり、消失したりすることがあります。

もちろんヒーリングだけの力じゃなく、それによる気づき、食生活の改善や心の持ち方などもあわさってそういうことが起こるのでしょう。

しかし往々にしてスピリチュアルやってる人は、それだけで対処しがちです。

西洋医学を拒むわけです。

そして色んな健康食品や代替医療を試してみます。

奏功することもあればそうでないこともあり、結局は亡くなられることも少なくありません。

以前書きましたが、サイキックサージェリー(心霊手術)で手っ取り早く病巣を除去しても、数ヵ月後には亡くなることが多いのです。

どんな形であれ「ガンと戦う」という気持ちがあると、あまりよろしくないみたいです。

だからといって「ガンもわたしの一部なんだ」とガンを愛したところで、そのまま進行していくことだってある。

いったいなんなのでしょう?

 

歯科医師の立場から見れば、ある程度進行した口腔ガンが目の前でどんどん小さくなり消えていくなんてことはこの僕ですら考えられません。

一度物質化したものは、そうそう消えないからです。

肺ガンが消えた、乳ガンが縮小したなどというのはそれらの専門医から言わすと、当然あり得ないわけです。

だから例え最新のPET診断でガンが消えたとわかっても、それがヒーリングなどの代替医療のおかげだなどとは信じないでしょう。

医師の立場からすれば当然のことです。

 

僕はガンが悪いものだとは思いません。

でももし僕がそうなったら、あるいは家族がそうなったら、今の段階で切除すれば完治する可能性が高いと言われたら、おそらく手術を受けるでしょう。

今の僕はそう考えるようになってきました。

現段階での抗癌剤は拒否します。

そのうちガン細胞だけに特異的に効くようになれば、受けるかもしれません。

放射線治療についてはよくわかりません。

要するにその時になってみないとわからないということです。

 

西洋医学というのも使いようだと思うのです。

でも多くの精神世界の人はこれを頭から拒否します。

あの江原啓之さんだって確か胃を切っていたはずです。

いずれにせよ”こだわる”という姿勢はいかがなものでしょうか?

 

ガンになる人は頑固な人が多いとか、怒りを抱えているとなりやすいとか、ストレスが多いと・・・・。

今の僕はそういう色眼鏡では人を見ません。

ただし相手の内面はわかるので、確かにその通りのことが多いとは思います。

でもおそらくは、ガンになることも人生の中に組み込まれていたイベントのひとつなんでしょう。

そこで戦うのもよし、あきらめるのもよし。

その患者さんとその周囲の人々が、みんなでその人のガンという一つの体験を様々な角度からするということではないでしょうか。

 

乳ガンは女性性の否定、特に赤ちゃんの授乳期にトラウマを受けており、ずっとそのことに対して容認できない思いを抱えていて発症する。

スピリチュアル的観点からはそう説明されますし、まさしくその通りなんですが、だからどうだって言うの?

そのことに気づかなかったのが悪いの?

抱えていた思いを手放さなかったから悪いの?

 

そうではないのじゃないでしょうか。

それらのこと全部ひっくるめて体験したかっただけなのです。

感情を解放しガンが消える、手術しまくって薬も飲み放射線も浴び、それで治って現代医学に感謝したり、治らなくて不信を抱いたり。

どれもOKなんです。

ただあなたがそれをどう捉え、自分をどう表現するかだけの話だから。

 

生命が限りあるものと信じている人にはガンは恐ろしいものでしょう。

そうでない人にも結構厄介なしろものです。

でも人生の何かが間違っていたから、その見返りとしてガンになったということではありません。

それも人生の一部なのです。

ガンをとことん体験してください、としか言いようがありません。

その先に何があなたを待っているのか、それはあなたがその先まで行かないことには誰にもわからないのです。

2011.4.28

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