I’ve had enough ~足るを知る~

昨日の話で、一見、世間の流れであるかのような歯科医院の増加による不況のあおりが自分の所にも来たように思われるが、実は自分の人生においてそのタイミングで自分が何者かを問われているだけであるということでした。

そのために今までの平穏無事な開業生活があった、というかそれをバックグラウンドにしないと効果的にならないということです。

だからそこで大切なことは、外側の世界に振り回されることではなく、もっと自分に自信を持って自分の個性を発揮することなのです。

もちろん診療所の他のスタッフの個性も同じことで、それらの総和が医院としての総合力になるわけです。

ただし、現実問題として改善点があるならそれはなされるべきでしょう。

僕が思うに、悪い所を改めるじゃなくって、うちの医院は今でも素晴らしいのだけれど、もっともっと良くなるはずだからそこを考えよう、という方がいいでしょうね。

そのためのアイデアはどんどん試してみるべきです。

言うまでもないことですが、これらは院長もスタッフも常に知識も技術も研鑽しているという条件下での話です。

そうでないならお話にもなりません。

 

普通は「自分は何者か?」を問われた時に、ついつい自分の欠点を探しがちなんですが、それではダメだということです。

そしてこの際に人は、自分が長年捉われていたものを見るようになり、それを手放すようになります。

これで何もかも清算完了!

あとは前進するのみ。

結局、するべきことは人生のどの局面においても同じなのかもしれません。

 

話変わって、今あなたが脱サラしてラーメン屋さんを開いたとしましょう。

元々ラーメン好きで食べ歩きが趣味だった上に、オリジナルのスープが大評判を呼び、今や近所迷惑なくらい行列のできる店になりました。

そこで2軒目を出すことにしたのですが、本店の一番弟子が頑張ってくれてそこも本店に負けない位の大繁盛。

あっという間に県下に10件の店を出すようにまで成長し、そのうち周囲の県にも20店舗、もう会社組織です。

 

さあそうなると今度は全国展開を考えます。

ラーメン激戦区の東京で自分のラーメンが受け入れられるかどうか試したい。

税理士もGOサインを出しています。

 

・・・・・と、ここまではよくある話です。

僕が聞きたいのは、最初脱サラしてまで開いたラーメン屋さんの初心は何だったの?ということ。

自分の作ったラーメンがお客さんの笑顔をもたらすこと、

「ありがとう、美味しかったよ」のひと言、

今度は友人を連れて来てくれ、「ここのラーメン旨いねん」と、さも自分のことのように自慢してくれること、

それらは何処へ行ったのでしょう?

自分のオリジナルラーメンが日本中で認められて、より多くの人に喜んでもらえる、それもわかります。

わかるんだけど、あなたのそのチェーン展開の中でつぶれていくラーメン屋さんもあるわけです。

 

まずいラーメンはいらない。

そんなものを出すラーメン屋はつぶれて当然。

果たしてそうでしょうか?

これはなにもラーメン屋さんに限ったことじゃなくて、居酒屋さんでもスーパーでも、とにかくチェーン展開可能なものならすべてに当てはまることなのです。

もし、他の店が全部つぶれてあなたのラーメンチェーンの傘下に入ったとしたらどうなると思いますか?

ラーメン業界自体が衰退しますよ、確実に。

 

和民のような居酒屋チェーンばかりになれば、反対に街全体が没個性になります。

そしてその陰で夫婦二人でやっているようなところはつぶれていく。

あくまでもある側面においてはですが、和民は街をつぶしていっているとも言えるのではないでしょうか。

 

3日前の「ホームページの意義~真の繁栄とはなにか~」の最後の方で書いたように、あなたの歯科医院は色んな作戦が功を奏し押しも押されぬ人気の歯医者になりました。

はるか遠方からも患者さんが訪れるようになった頃、2階のテナントがあいたのでそこも借りることにし、診療台を増設、スタッフも増員。

地域周辺の歯医者に大きく水をあけました。

が・・・・・

 

自院から歩いて5分ほどにある歯科医院の院長が、ある日の診療終了後、院長室で自殺したとの報があなたの元へ入ってきます。

その彼は、あなたの学生時代からの大親友でした。

奥さんによると、最近ずっと収入の減少に悩んでいたとのこと。

でもその原因が、親友の歯科医院の盛業にあるとはとても口に出せなかったみたいです。

あなたは親友として、彼の診療所の売却の役を請け負い、久しぶりにその診療所をのぞいてみました。

院長室の机の上に置いてあったものは・・・・・

マネジメントからコーチング、経営に関するありとあらゆる本、そしてレーザーのパンフレット。

開きかけの歯科業界紙の論文のページにはラインマーカーが引かれ、付箋のついたところをめくってみると増収増患対策のセミナーの案内がありました。

すでに申し込んでいたようなので、来週末はそれに参加する予定だったのです・・・つい先日まで。

結局彼は、「あなたは何者か?」の問いに答えられなかったみたいです。

あなたが自分の医院の繁盛に悦に入ってた陰で、あなたの大親友はその院長机でさぞ頭を悩ませていたことでしょう。

 

これであなたの歯科医院は真の繁栄と言えるでしょうか?

 

ラーメン屋さんにしても美味い不味い、愛想の善し悪しなども含めて様々な店があるから、その中でのあなたの店の味、個性が存在し得るわけです。

一人勝ちというのは、その時はいいんだけれど、そのうち地獄を見ますよ。

なぜなら追う立場ではなく、追われるばっかりだから。

常に逃げ続けないといけないから。

具体的な例で恐縮ですが、僕はイーオンはもう先行き長くないと考えています。

規模に比して実態が伴っていない。

 

足るを知る。

それはね、周りの人を活かすことでもあるのです。

自分が良ければいい、勝ち組になればいい、ではいずれつらくなりますよ。

大きな間違いはパイが限られているという錯覚。

歯医者であれば、患者さんの数は限られているからそれを奪い合うのだという錯覚。

しかし、皆が自分の個性を大切にすれば、あなたの元へはあなたの個性に惹かれる患者さんが必ず集まります。

もちろん、医院間で患者数や収入の差はあるでしょう。

それは問題じゃありません。

あなたがあなたらしくあり、そして分相応の収入を得られるのなら、それ以上何を望みますか?

足るを知るというのは、そういう意味でもあるのです。

真の繁栄とは、自分だけのものではない、考えてみればごく当たり前の結論に行きつくのでした。

これ、ずーっと書きたかったことなので、非常にスッとしました。

2011.5.11

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