僕は「かえる庵」さんに行くと、必ずビールと三品盛を頼み産経新聞の朝夕刊を読みます。

産経新聞をとっているのにもかかわらず、なぜか月刊の「よみっこ」という読売新聞が出している奈良のミニコミ誌が置いてあります。

その中で僕のお気に入りのコーナーが「坊主数珠つなぎ」

むか~しの紳助の番組でやっていた、確か桂小枝の「美人数珠つなぎ」をパクったものです。

若いお坊さんを生い立ちから、なぜ僧侶になったか、今どのように心掛けているかなどをインタビューするのですが、これが面白い。

父親が僧侶の場合、今はすぐに仏門に入れるのではなく、まずは社会で揉まれてきなさいと、普通の職業に就かせることも多いようです。

これは正解。

 

さて、今月号の若いお坊さんのお話。

彼は亡き父の後を継ぎ、今はあるお寺の住職をしています。

突然でしたので引き継ぎも十分ではなく、むしろ檀家さんなどの周りの人々に助けてもらう毎日。

父親は元々心臓が悪く、医者からも手術を勧められていたのだそうですが、それを頑なに拒み結局それが元でお亡くなりになりました。

「どうしてお父さんは手術しなかったのだろう?」

「手術さえしていればお医者さんはもっと元気で生きられると言っていたのに」

この疑問は父親が亡くなって数日後、ある檀家さんがこっそり教えてくれたことで氷解しました。

 

実はこの若い住職さん、子供のころに自転車に乗っていて交通事故に遭い、頭蓋骨陥没骨折の重傷。

というより、「おそらく助からないだろう」とまでご両親はお医者さんに言われていたそうです。

彼が生死の狭間をさまよっている間、父親は毎日仏様に心底拝みました。

「わたしの命はどうなってもいいですから、どうか、どうか息子の命を助けてください」 と。

 

その願いが聞き入れられたのかどうか、4か月の入院の後、何の後遺症もなく彼は無事退院したのです。 

 

父親は自分が心臓を手術しないと命は長くないと言われた時も、かつての仏様との約束を思い出し、それを反故にはできないと拒んだわけです。

それを聞いた彼は、檀家さんの前で涙が止まりませんでした。

そして父親のような立派な僧侶になろうと決心したのです。

 

僕は皆が皆、こんなふうになるとは思いません。

でも、僕たち子供の思い到らない愛情を両親は持っていたのかもしれません。

だから面と向かっては優しい言葉をかけられないかもしれないけれど、せめて心の中だけでもいいから

「お父さん、お母さん、ありがとう」

ですかね。

2011.5.19