日本補綴歯科学会第120回学術記念大会に参加して
普通の感想文か?
というようなタイトルにしとくと、また全然別口からのアクセスがあったりするので、ちょっと遊んでみます。
20日は午後1時からの開始だったので、奈良をゆっくり出発できました。
京都から広島まで1時間40分くらい。
時間的には奈良から宝塚まで電車で行くようなもんです。
広島駅はあまり変わってなくてうれしい。
いつもなら新幹線口からタクシーで行くんですが、時間の余裕があるので路面電車に乗ることにしました。
途中、懐かしい広島の街を見ながら袋町で下車。
とりあえずホテルに荷物を預けて、小さなリュックを背負って学会場へと向かいます。
今は小中学校全体的に信州から東北方面への修学旅行は自粛するようにとの文科省からの通達があるようで、関西以西の観光地はどこも学生で一杯です。
原爆資料館の前にも観光バスが並んでいました。
今回ひとつ大失敗したのは、ホテルは早めに安くて良いところを押さえていたにもかかわらず、学会の事前登録するのをコロッと忘れていて、気がついたら締め切り終了。
あとは当日の登録で費用が5千円余計にかかってしまいました。
何のために早めに安いホテルとったんだか、、、おバカです。
4時にはシンポジウムが終わったので、以前勤めていた横山歯科へ。
僕が勤めていた17年前よりは当然IT化されているはずなので、診療室内もっとスッキリしてるかと思いきや、以前より物が増えてガチャガチャしてるのは何で?
レーザー溶接器(普通、開業医が買うようなものじゃありません。値段的にもあり得ません)の上は完全に物置に(笑)
ちなみに横山先生はストローマンインプラントの正式なfellowであり、多くのセミナーのインストラクターを務める大変に優秀な先生です。
手先が異常に器用。
僕の知っている中では、日本中でも阪大の補綴の同期入局の六人部君と双璧。
目で見たものを、あるいは頭でイメージしたものをそのまま手で表現できる人たちです。
診療室には40分位しかいませんでしたが、必要な情報はもらってきました。
出入りの懐かしい技工士さんとも会えました。
翌日の土曜日の予約表を見て、何か面白そうなオペでも入っていたら学会に行かずに見学しようと思ったのですが、全部一般的な治療だったので断念。
今、歯科界のトレンドはオールセラミックによるメタルフリー治療、それも強度の面からジルコニアによるもの。
そしてCAD/CAMです。
一般工業界ではかなりの精度のものがコンピューター制御により作ることが可能ですが、歯科の世界では臨床的に許容できるような精度のものは最近までありませんでした。
それがようやく導入出来るレベルのものが流通しだし、僕もそちらへと方向転換しようとしているところです。
ゴールドは金相場に左右されるというのもあるのですが、なんにせよ歯は白い方が良いに決まっているし、金と言っても純金ではありませんから金属アレルギーの問題もある。
また多くの歯を治療する場合、被せ物は結構な重さになります。
これから歯科の潮流は大きくそちらへ流れていくことはもはや疑う余地がありません。
横山歯科を出てホテルに戻りシャワーを浴びて、中町にある懐かしの一膳酒場へ。
この店については明日にでも詳しく書きますが、とにかく僕たち夫婦が一番可愛がってもらったお店で、今も交流があります。
今回、行くことを告げずに開店直前に「ヨッ!」と入って行ったので、マスターの西尾さん、僕の方を見つめたまま固まってました。
カウンターで四方山話をしていると、お客さんが次々入ってこられ座敷は全部満席。
なのになぜかカウンターは僕一人。
今の若い人たちは一人とか二人でカウンターに座らんのんやろか?
そこであり得へんような人に会いました。
昔からよく一膳酒場を利用されている精神科のお医者さんなんですが、現在は北海道にいらっしゃるのに、ちょうどその日に帰って来られ奥さまと一緒におみえになったのです。
おおっ、なっつかしぃ~。
ていうか、僕、広島にいる時に一膳酒場のスタッフと一緒にこの先生のご自宅にお邪魔して、散々ごちそうを食い散らかし飲み散らかした揚句、そのままそこで寝てしまったことがありました。
僕、その先生のご自宅に行くのも初めてならば、そもそもがその先生と初対面だったのです。
今でも奈良の近くのバーに行くとマスターに「西塔さん、寝んように」と注意されます。
じぇんじぇん進歩してません。
こんなヤツが覚醒などと片腹痛いです(笑)
一膳酒場の後は中央通りを渡って仏壇通りすぐにあるバーOldiesへ。
別にアメリカのオールディーズがかかっているわけではありません。
ここのマスターこと桶本君と次に行ったGEORGEの江郷ちゃんだけは、僕が予告なくいきなり店に入って来ても全然驚いた顔をしません。
ひとこと「お帰りなさい」
桶ちゃん、今NBA(日本バーテンダー協会)の広島支部長だそうです。
カウンターに先客が一人。
彼も昔よく一緒に飲んだ人で、今はラジオのディレクターをしています。
結局、ホテルに帰ったのが夜中の2時。
きちんとベッドの上で服も脱いで寝ましたよ(笑)
およそ10年くらい前までは学会といえば、各大学の研究発表が主でした。
そうなると僕たち臨床医はあまり聞くべきものがありません。
もちろん最新の研究に触れるのは大切なんだけれど、それらがある程度まとまった形になった時に参考にするのであって、途中経過は必要ありません。
今は臨床と研究を融合、言い換えれば大学と一般臨床医とを繋ぐようなスタイルに変わって来ていて、僕にしてみれば参加する価値のある学会になっており有難いです。
他の都市へも行けるし。
ただ補綴学会に所属しているということは、今は開業医でもかつて大学の研究室に属していたということです。
そして実質的に歯科の臨床を引っぱっていっているのは、そういった専門性を持った開業医達なのです。
少なくとも歯科の場合、大学が臨床をリードしているということは稀だと思います。
多くのシンポジウムやセッションが持たれましたが、同時に別会場のものを聞くことができないので、あくまでも僕が参加した限りにおいてお話しますと、やはり主流はここでもインプラント、そしてCAD/CAM、ジルコニアによる修復でした。
歯科においてもiPS細胞を使った組織修復、再生などの研究が行われてはいますし、いずれ福音をもたらすようになるでしょう。
ジルコニアのセッションにおいては、挙手して質問もしました。
おそらく僕の中で補綴学会で質問したのは初めてのような気がします。
僕が不満に思うのは、あまりにも全体的にインプラントに傾き過ぎだということ。
インプラントを中心に据えた治療計画を立案するとなると、将来に不安を残しそうな歯は基本的に抜歯になります。
なぜなら一つの口の中に強固に安定しているインプラントと、歯周病に罹患して不安定な歯を(いくら手術とかを施したとしても)同居させるのはバランス的に問題があるからです。
もし歯を残してあげる、できるだけ助けてあげるというスタンスに立つならば、インプラントではなく部分義歯を活用することになるでしょう。
もちろんケースバイケースですよ。
ただし当院で採用しているMTコネクターなどは学会の中では知られていないし認められていません。
通常のバネを用いた部分入れ歯などは残っている歯を助けるどころか、寿命を縮めるだけなので、必然的に特殊かつ複雑な設計をせざるを得なくなります。
そうすると治療も複雑になるしコストも跳ね上がりますので、MTコネクターを知った今、そんなことをする気には毛頭なれません。
MTコネクターはインプラントとそれだけ比較すればそりゃ噛む力にしたって違和感にしたって劣るでしょう。
でも口の中全体として見たら、インプラントよりは適切な治療法になることだって多いのです。
このオプションを持たない補綴学会の指針というのは、僕とすれば???ですね。
夜の話ばかり書いても仕方がないので、今回の広島話は終わりますが、一番残念だったのが「ふうらい房」の予約がとれなかったこと。
人気があり過ぎて当日とか前日の電話じゃ話にならないみたい。
次に行くときは早めに電話しよう。
2012.5.25